豊島逸夫の手帖

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2008年 金市場の見通し

2007年12月28日

1000ドルを目指す長期的上昇トレンドは不変。200ドル幅の短期的乱高下(高ボラティリティー)も不可避。スタグフレーション観測台頭で720ドルの下値、ドルユーロ1.50などのドル不安、大型ヘッジ買戻しなどで上値955ドル。史上最高値更新は時間の問題だが、年内の1000ドル到達は成らず。瞬間タッチの上値、下値達成後、そのレンジを時間をかけて埋めてゆく。ドル円は108-123円のレンジ相場。

各論に移ろう。

―サブプライム発の信用収縮は1-3月がピーク。しかし、サブプライム ウイルスに汚染された証券化商品に対する不安感は残る。投資家の心の傷は消えない。実物資産への回帰現象は底流となりボディーブローのごとく効く。

―マクロ経済の最大のテーマは米国の景気減速あるいは後退の可能性。グリーンスパン流に言えば可能性は50%。FF金利は3%台へ段階的利下げ。ただし、サブプライムがピークを過ぎれば、原油100ドルに対する金融政策として利上げへの転換もありうる。

―その原油は需給実勢価格を大きく上回る過剰流動性相場継続。高止まり。オイルマネーはSWF(国富ファンド)と化し、日米欧のマーケットで存在感を高める。

―SWF、そしてカルパース(カリフォルニア州職員共済年金・全米最大)など、ビッグマネーの商品への分散投資が加速。ロシア、UAEなどの金買いが想定内。

―米大統領選挙に関して、米国外の国際金融市場の最大の関心事は、米経済赤字体質の是正策ありやなしや。とくに、団塊世代のリタイアを迎え、財政赤字問題が再燃。それに対し、民主党は政府支出増大(ばらまき)、共和党は大型減税継続。どちらに転んでも"痛み"を伴う赤字対策は選挙の年には出しにくい。そこから、米国外のマーケットではドル不安が加速。ベンチマークのユーロに対してドル安が進行するも、ドル円には金利差縮小といえども絶対的金利差が厳然として残る。100円のような劇的円高は考えにくい。

―中国、インドの高度経済成長は続くが、インフレ率6.9%の中国の荒っぽい引き締め政策はリスク要因。世界的にスタグフレーションともなれば、ディカプリング説にも限界あり。

―地政学的要因はイラン核関連が歩み寄りムードだが感情的もつれの根は深い。ブット暗殺など中東の火種も尽きない。

―アングロゴールドによる300トン規模のヘッジ買戻しが想定内。ただし、900ドルともなれば新規ヘッジ売りも再開されよう。リサイクル急増と同時進行で相場の頭を抑える。中銀売却に関しては、むしろ中銀購入のほうが材料化しそう。

―供給サイドは、ついに南アが産金国第一位の座を中国に明け渡す年。総体的には、生産量に著変なし。二次的供給源が主役となる。

―国内では、東証のGLD(現物拠出型金ETF)上場で、NY証取との24時間金ETF売買ネットワークに日本もいよいよ加わる年になりそう。金の金融商品化が加速しよう。

以上につき、WGCセミナー(1月19日東京、1月27日大阪開催)にて詳説します。詳細は1月4日にお知らせ予定。それでは皆様良いお年を。

2007年