豊島逸夫の手帖

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金 急反騰

2007年11月21日

48時間前の安値792ドルから、昨晩のNY時間外取引では803ドルまで急反騰。参加者少なく、ブレやすい地合いとはいえ、ボラティリティーが異常に高い。

原油がNY終値ベースで最高の98ドル。理由はドル安。そのドルは対ユーロで1.48の最安値更新。

ペルシャ湾岸諸国のドルペッグ(連動)離脱の動きに加え、シンガポールでは温家宝首相までがドル不安を示唆する演説。ECB総裁は来週、人民元切り上げを求め異例の動きで北京に乗り込む。質への逃避資金を集める米債券市場では10年物米国債の利回りが引き続き4%台の異常な低水準。シカゴ債券先物市場では12月11日のFOMCにて0.25%の再々利下げを91%織り込む。

NY株は住宅金融危機を連想させるほどの金融株暴落。とくに、GSE(政府援助機関)であるフレディーマック(連邦住宅貸付抵当金融会社)、ファニーメイ(連邦住宅金融公社)が、1日でそれぞれ何と29%、25%の暴落。両株価ともこの1ヶ月で半減した。昨晩のキッカケはフレディーマックが36億ドルのプライム(サブプライムではない!!)債権の評価損を発表したこと。この2公社で住宅金融残高11兆ドルの40%を抱え、その大半が優良物件とされるプライムローンであるから心理的影響は大きい。さらに、サブプライム分野では米住宅金融大手のカントリーワイドがついに破綻の噂。同社に対するCDS(債務不履行リスクを保証する商品)のコストが一年前はLIBORプラス0.16%だったのが、昨日1日で1.6%も急上昇し、なんと9%に。ちなみにWSJ(ウオールストリートジャーナル)紙は、破綻の噂を強く否定。でもマーケットは疑心暗鬼。

FRBにとって昨日は"歴史的な日"であった。情報の透明性を改善するため、インフレ見通しの具体的数値(四半期ごと)を初めて公表したのだ。以下がその数字。

消費者物価上昇率(コアではなく全体)
2007年2.9-3.0% 2008年1.8-2.1%
GDP成長率
2007年6月時点2.5―2.75%を下方修正し、1.8―2.5%

サブプライムの影響が実体経済にも波及し、来年には原油高も収まるとの見方だ。

なお、同時発表のFOMC議事録では、例の10月の再利下げがclose call(際どい決定)であったとのこと。FRBとしては12月の再々利下げには反対論者も多い、というトーンを打ち出した上で、上記の経済見通しでは、現状を見れば再々利下げに踏み切らざるを得ないか、とのニュアンスを滲ませている。ややっこしいが 結論は再々利下げせざるを得ないということだ。

以上を踏まえた上で、金市場のフロアの受け止め方は、原油最高値更新なのに、FRBはインフレ予測を低めに見ている。(FRBは賃金高に波及しないかぎり、インフレは鎮静化とみなす)。ドル最安値、原油最高値を考慮すれば、もう一度金を買い直すか、という雰囲気。とはいえ、2週間前の原油高値更新時の840ドルに比し、やっと800ドルを再突破がやっとという地合いである。短期的な戻り売り基調に終止符とはまだまだ言えない。

ここまで24時間ごとにマーケットのセンチメントが猫の目のように変わることは異常である。休暇前の荒っぽい値動きと片付けてしまえば身もふたもないが、24時間で金価格20ドル程度は容易に乱高下する不安定な調整局面がまだ続きそうだ。

米CNBCで"明日はどうなる"と突っ込まれたコメンテーター氏"サイコロでも振るか"。"そんなことで通ると思ってるの(Can you get away with it?)"と女性キャスターに迫られていた。

彼に同情するよ。日本の女性キャスターはもっとやさしいから良かった(笑)。

2007年