豊島逸夫の手帖

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史上最高値目前で逡巡する金市場

2007年11月9日

昨日も乱高下。東京時間で824ドルまで売られ、NYでは845ドルまで買われ、結局24時間経って830ドルで戻ってきた。連日の20ドル近い乱高下。史上最高値850ドル(ロンドン現物建値)を目前に揺れ動く投資家心理が、そのまま価格変動に現れている。NY株も昨晩はダウで200ドル近く急落後、200ドル以上急騰するジェットコースター相場。原油も100ドル直前で逡巡。

傾向が一貫しているのはドル安と債券高(金利安)か。

このマーケット全体の雰囲気(センチメント)は、今朝の日経朝刊の見出しに要約されている。3面"サブプライム楽観論後退/ドル安原油高でインフレ懸念も/FRBジレンマ直面"。となれば質への逃避で実物資産が買われる。しかし、1面"米経済、来春まで停滞/FRB議長 追加利下げ 慎重判断"。

昨晩のバーナンキ議会証言についての記事で、12月11日の次回FOMCにおける再々利下げが五分五分との内容である。金市場は、再々利下げもありと見て史上最高値へトライの最中。仮に、それが見送りとなれば、失望売りとなるは必至。そこで早めの利益確定売りという動きも出てくるわけだ。

まぁ、どう考えても、8月中旬にヘッジファンドの益出し売りで650ドルまで急落後、840ドルまで調整らしい調整もなくほぼ一直線にあげてきた相場ゆえ、するりと史上最高値更新となるほうがおかしい。とはいえ、下値を待つ投資家は世界中に居る。下がればすかさず買われる地合いでもある。国内金価格は円高で海外金高が相殺される展開。欧米投資銀行の金価格見通しも毎週のように上方修正が相次ぐ状況。

なお、サブプライム第二幕の実態を米ビジネスウイーク11月12日号の巻頭記事がまとめて伝えている。Wall Street's Next Worry(ウオール街の次の心配事)と題して、本欄でも繰り返し触れてきた債券保険会社が新たな火種との内容。CDS(11月7日付け"820ドル突破"参照)を金融機関に売ってきた業者の話だが、例えばACという会社は、保険金支払い可能に充てる資本を400億円ほどしか持たず、2兆円相当の保険を売っていたという。その種の保険つきのCDOの本当の時価を、蓋を開けてみたら当の銀行も把握しておらず、メリル、シティー、モルガンと相次いで巨額の"追加"損失の発表を余儀なくされる事態となっているわけだ。しかも、そのACAの大株主(27%)が、ベアースターンズ(10月22日付け"ヘッジファンド破綻の実態"参照)というのだ。

元々は、この債券保険を扱っていた大手はAIG社であったが、2005年にさっさと手を引いた。その間隙を突いてACAのような規模の業者が手を広げたという。メリルの相方も当初はAIGであったが、ハシゴ外された形になって現在に至ったようだ。第二幕の実態に、昨日述べた司法当局の手も入り、これから解明されるであろう。

2007年