豊島逸夫の手帖

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ゴールドマンサックス 2008年金売り推奨

2007年11月30日

昨晩の各種外電は、一斉にロンドン発で、GS社のエコノミスト ジョン オネール氏が"来年 お薦めトレード トップ10"のなかで金売りを推奨している、と。ただし、米ドル建て金価格という条件つき。根拠は、サブプライムも来年は一巡。ドル不安も和らぎ、ドル高に戻す。金への質への逃避買いの必要もなくなる、というもの。ちなみに、そのトップ10には、ポンド売りの円買いというのも入っている。

同氏の価格予想は、まず770ドルが破られ、夏前までには600-650ドルまで調整売りが入るというシナリオだ。

2日前には、ゴールドマンサックスNY発で、オスカー カブレラ氏が2008年の年平均金価格は800ドルという予測を打ち出したばかり。

まぁ、大手の銀行には、部門間で売りたい商品にばらつきがあり、担当者により全く違ったコメントが出ることはよくあること。NYとロンドンも、おそらく行内ではライバル関係にあるのだろう。

筆者の古巣のスイス銀行でも、チューリッヒの外為チームがドルを売ると、バーゼルは意地になってドルを買うという、競争心むき出しの光景が毎日のように見られたものだ。だから、筆者から見ると、"部門間で丁々発止やっとるな"という感じ。

貴金属部門内でも、鉱山会社に"金は下がるから、今のうちにヘッジ売りしといた方がいいでっせ"と奨めるヘッジ担当者あり、"お客さん、金はこれから上がるから今が買いでっせ"と奨めるリテール部門あり。所詮、ポジショントークなのだよ。

まぁ、その点、本欄は、もう59歳の筆者が、日本人としては珍しくスイス銀行とかWGCの組織を利用して世界中の金市場の川上、川中、川下すべての体験を経てきたので、そのノウハウを後輩や一般投資家に伝える気持ちで"趣味"で書いている。この年になって、余計な心配せずに"ピュア"な気持ちで書けるようになったのだ。

さて、くだんのGS社予測。ロンドンをとるか、NYをとるか。筆者の目から見ると、"サブプライム鎮静化"という大前提がやや甘いかな。でも、読者の皆さんが既に感じておられるように、ここのところ筆者は一貫して短期調整イメージで弱気である。調整が多少長引くという点では同感できる。しかし、これまでさんざん述べてきた構造的長期上昇トレンドは不変ということは最も自信を持って言えるのだ。

PS
そろそろ2008年の金価格はどうなる、みたいな質問テーマが出てきて、毎日想像力を逞しくして来年起こるかもしれないイベントをリストアップ中。正直、今回ほど予測が難しい年はないよ。下は600ドル、上は1000ドル、どちらも絵空事と一蹴できず、そのレンジ内なら、なんでもありだからね。

2007年