豊島逸夫の手帖

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サブプライム ショック

2007年7月11日

7月も中旬になれば欧米市場の仲間たちも気もそぞろに夏休みモード。早いシフトで休暇申請した連中の空席も目立ち始める。そんななか、うかない顔で今年のバケーションはあきらめた、と肩すくめる一団が債券市場の友人たちだ。サブプライム問題が現在進行形で拡大中。特にCDO(資産担保証券)組成販売そして融資の関連部署は社内でも"戦犯"扱いである。時代劇風に言えば、大目付の吟味が済むまで蟄居(ちっきょ)申し付けられた与力たち。今風に言えば、牛肉コロッケの原材料が肉と判定されるのか内臓と判定されるのか、再検査の結果待ちなのだ。何千何万という住宅ローン債権の本当の価値がデューディリ(精査)されつつある。

そんな最中に、S&P社は昨日、1兆4千円相当の住宅ローンを担保にした債券を"要注意"リストに載せた。NY株もドルも嫌気して下落。ドルはユーロのみならず対円でも売られた。金は最近には珍しく市況の法則どおり買われる素直な展開。660ドル台を回復。NY先物買い残高は先週末発表で204.2トン(前週比8トン増)と依然低水準。金ETF残高は599トンへ増加(582-592-599と徐々に再上昇)。マーケットの地合いは軽くなり、長期保有の買いも入ってきたことを示唆している数字だ。

そこで、懸案のサブプライム問題だが、先述の浮かない顔の連中が夏休みを諦めたということは、ここ1-2ヶ月が山ということだろう。思い起こせば、同じ連中が3月から、Jeff(筆者の呼び名)ほんとにヤバイのはCDOだ、と騒いでいたので、その当時の本欄にも書いたのだ。この手の生情報には先見性がある。

商い薄い季節に入るが、今年の夏休みのマーケットはかなりホットになる予感がする。仮にサブプライムが飛び火してそのマグニチュード(震度)が上がった場合だが、まずはリスクマネーの撤退で金の投機的買いポジションは手仕舞われる。つまり金価格は下がる。それが一巡したところで、徐々にリスクヘッジの戦略的買いポジションが入ることで上昇トレンドになる。そんなシナリオを想定している。

なお、原油も高い。原油が先に買われた分、金には割安感がある。循環物色的な買いが時間差攻撃で出る可能性も強いと思う。原油と金の相関も色々議論されるが、やはり原油が上がれば金もいつかは上がるよ。ただ、最近はフェイント攻撃が多いので皆が戸惑っている感じだ。

2007年