2007年2月27日
相場が過熱化。690ドルに迫る勢い。投資家がいま最も知りたいこと。 "そうはいっても、去年730ドルまで急騰した後、550ドル割れまで急落したではないか。今回もその二の舞じゃないの?!"
そこで、昨年と今年の状況と比較してみた。まず、共通項は世界的過剰流動性=リスクマネーの循環物色。これはおもにヘッジファンドが出たり入ったりする現象のことである。したがって、短期的相場変動は相変わらず激しい。今回だって、すでに年初から100ドル近い上昇である。
そして、原油価格上昇、インフレ懸念。この波は、一時かなり後退したのだが、ここにきてまたぞろ息を吹き返しつつある。CPIが事前予想値を0.1%上回っただけでインフレ懸念による金買いとなることを見ても、マーケットがこの材料に相当神経質になっていることが読み取れる。
ここで、昨年5月11日と先週末時点の市況データを比較してみよう。
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2006年5月11日 |
2007年2月23日 |
NY金価格高値 |
720.00ドル |
683.00ドル |
原油価格 |
73.32ドル |
61.14ドル |
ドル円 |
110.32円 |
120.94円 |
NY株価 |
11500.73ドル |
12647.48ドル |
ドル長期金利 |
5.155% |
4.678% |
NY金先物買い残 |
405トン |
404トン |
最後の、NY買い残が不気味に一致しているね。相当膨れ上がっていることは間違いない。マクロ的には、ドル高、株高という逆風をこなして、金利軟調傾向を追い風に今回は上げているのが特徴だろう。昨年5月当時に円キャリーで金を買ってここまでキャリーしてきた(続けてきた)連中がいれば、円安、金高のダブルメリットで笑いがとまらないはずだ。
なお、筆者の注目点は先週来、ドル長期金利が下落している理由。それが、
本欄2月9日で述べた住宅金融市場異変(サブプライム破綻懸念)に起因する米国債への"質への逃避買い"現象だ。これは、信用リスク増大=リスクプレミアム拡大というカタチで金市場にも波及する可能性が充分考えられる。
それから、これが大事なポイントだが、昨年前半に高値警戒で急減した実需が昨年後半盛り返したという経験。下値ではアジア中東の現物買いが支えるという安心感が今回は効いている。いずれ調整局面も必至で、下げもあろうが、底は浅い。600ドル割れを見る向きはほとんど見当たらない。650ドル割れなら割安感、値ごろ感が出る地合いだ。
マーケットの予想値もここにきて年初より上方修正が出始めている。(年初の今年高値予想の中心域は700-750ドルであった。)
総じて、調整売り必至だが、長期トレンドには変化なく、例によってレンジの段階的下値切り上げが続くというのが筆者の結論だ。ヘッジファンドの利益確定売り、さらに、いったん調整局面入りすれば、狼狽売りが長期的には買いのタイミングとなろう。円高に触発された円キャリー巻き戻しが思わぬ金の調整売りを呼べば、円建てでも面白い買い局面となりそうだ。