2007年11月15日
昨晩WGCロンドンが発表した恒例の四季報の要旨である。
―8月のサブプライムショックの直後、金価格は急落したが、その後は9月に一貫して上昇を続けた。そのような市場環境の中で、今期の金需要全体は980トンと、前年同期比16%の伸びを記録。とくに今期の特徴は、旺盛な機関投資家需要であった。ETFなどの新型商品が138トンと過去期間最高水準を記録。対して、宝飾需要は623トン(同3%増)。工業用需要は116トン(同1%増)であった。
―前期に過去最高を記録して注目されたインドは、さすがに反動で185トンへ急減するも、前年同期比では5%増を維持。好調な株式市場から派生する資産効果、そしてルピー高で、国内金価格が心理上の抵抗線とされる9000ルピー/10グラムを下回ったことが好調の理由だ。とはいえ、9月に海外金価格が高騰するや、需要は急速に萎んだ。10月のNavrati祭やDiwaliなどの縁起の良い季節の金需要も、高値にイマイチ盛り上がらず。モンスーンは良好ゆえ、農村部の可処分所得は悪くない。高値慣れしてくれば買いが再開されよう。
―中国は78.9トンで25%増。ここは今年に入り、四半期毎に23-24%の増加を見せ、一貫して堅調である。株式市場の高騰に起因する資産効果が働いている。
―中東は地域全体で93.2トン(13%増)。国別ではサウジ(34.4トン、19%増)が健闘。同国は原油高による国庫増収を国内インフラ整備および社会福祉に充てたことで、富の浸透がゴールドジュエリーなど贅沢品への支出増をもたらした。輸入宝飾品に対する関税を12%から5%に減らしたことも要因のひとつ。
―米国は64.0トン(20%減)。サブプライム問題、原油高の家計への影響、 そして金価格高騰が重なり、急減。とくに、マスマーケット向けの低価格品が落ち込んでいる。対して、高額品は堅調。
―その他の地域ではトルコ(86.3トン、23%増)、ロシア(22.4トン、23%増)が目立つ。トルコは過去2位の期間需要量記録であるが、リラ高が海外金高を相殺し、逆に国内金価格は下げ基調というのが主な理由だ。ロシアは産油国としての好調な経済を背景に、宝飾市場のインフラが整備されつつある。流通、品揃え、店作りなどの改良が進行中。輸入物が多く、トルコ、イタリア、中国の製品が激しい競争を演じている。
―供給サイドでは公的売却の急増(164トン、107%増)とヘッジ買戻しの急減(27トン、前年同期は59トン、今年4-6月期は164トン)が今期の特徴。
―公的売却の急増は9月末のワシントン協定期末直前の駆け込み売却、そしてスイスが2009年9月末までに250トンの金売却を発表したこと(今期は早速99トンを売却済み)による。それでも、年間公的金売却量はワシントン協定の上限500トンには及ばず475.75トンであった。10月以降の新年度については、すでに53トンが売却済みと確認されている。しかし、ドイツが年間売却量を金貨鋳造目的の8トンに限定しているので、残り2年の第二次ワシントン協定の各年間500トンという売却枠は、未達に終わる可能性が強い。ワシントン協定非加盟諸国については、今期は新規購入が売却を上回った。