豊島逸夫の手帖

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金も急落

2007年2月28日

650ドル以上は未だ固まっていない=調整売り必至=円キャリー巻き戻しが重なれば、円建て金価格に思わぬ下げも。サブプライム異変で債券へ、質への逃避。ここまでは想定内だったが、中国発株安の連鎖、NY株暴落は想定外だった。中国は株安まで輸出国か(苦笑)。背景は2月5日付け本欄で書いたような状況があった。

懸念は中国バブル騒動。先週、北京の政府に近い有力筋がFT(フィナンシャルタイムズ)とのインタビューで"皆が皆、株上昇を期待するようになると、これはバブルの兆候だ"と爆弾発言。これが一面トップに載り、同国株式市場が急落。連日、バブルか否かが大きな問題化している。皆がうすうす、こんな好調子が何時まで続くわけがないと思い始めていた矢先の"政府に影響力を持つ人物"の発言ゆえ効いた。バブルという現象は、ムードに左右される面があるので中国国民の群集心理反応に注目している。

そこに、株式課税強化などの引き締め措置の話が流れた。上海株が9%の強烈な下げ。それがNY株にも波及。すでに、サブプライム焦げ付き懸念で金融株が売られていた矢先。おまけに、引退後も元気なグリーンスパンさんの米景気後退予言まで飛び出した。

債券市場に安全性を求める資金が集中シフトし、ドル長期金利は急落。にわかに、6-7月利下げ説が勢いを得てきた。

逆にエマージングには強い警戒感。これまで米国債と新興国債のスプレッドが縮小し、投資家が楽観論に傾きすぎた反動が来ている。リスクプレミアムがみるみる拡大。

NYSE(NY証券取引所)の昨日引け時、closing bellの瞬間が印象的だった。お立ち台に招かれたゲストたちがにこやかに拍手するなか、フロアーからは一斉にブーイングの嵐。日本時間朝5時前後に、数分でダウが200ドル近く急落する局面もあり、パニックを誘った。それが、ダウ指数計算に手間取ったため"空白の10分"が生じ、その間の下げが一挙にまとめて出たため、との取引所サイドからの説明もあり。計算違いでマーケットがパニックになること自体が怖いね...。とにもかくにも、ファンドは大幅なリバランスを強いられ、ヘッジファンドにはいずれ破たんの噂も出よう。

デリバティブの胴元=金融機関にも不安感流れる。顧客のリスクを肩代わりする商品ゆえ、そのリスクという"ババ"を誰が引いているのか。Who is holding the bag? =椅子取りゲームで誰が残る?という詮索が始まった。

金市場はといえば、既に昨日NY開始時から市場内部での調整ムードが出始めた矢先の、"想定外"のNY株急落。リスクマネーが萎縮するなかで、ファンドの撤退売りが加速。嵐が去るまで閉じこもって様子みようとの姿勢である。いつものことだが...。

さぁ、これからが長期的には買い場探しの番だ。ヘッジファンドが売り逃げるときこそチャンス到来。いつもながら、投機家が冷めるとき、熱くなるのだ。

2007年