豊島逸夫の手帖

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告白の週

2007年10月2日

今週はシティーとUBSが相次いで7-9月期の業績を発表。米大手銀行がサブプライムで蒙った損害実態を"告白"した。ゆえにconfession week (告白の週)。

シティー60%減益、UBS損失4000億円(赤字転落)とは、今朝の日経の見出し。にもかかわらずシティー、UBSともに株価上昇。NYダウは14,000の大台乗せ。何故か。

それは実際の数字を"告白"する姿勢が評価されたから。例えば、シティーの消費者(住宅関連)ローン関連の期間損失が23億ドルと発表されたが、そのうちの3分の2は、(未だ実現していない)潜在的損失を引き当て計上した数字である。さらに損失の数字を告白したことにより、リスクの所在も明らかになった。これまでは、分散されたリスクがどの程度存在するのか、見当がつかないという不安感が市場を支配していた。ゆえに、マーケットの視界が開けた。

この背後には、米欧大手銀行のしたたかな決算発表テクニックもある。7-9期に膿を出し切り、10-12月期の相対的改善をより印象的な数字(前期比%)にするというやり方。だから、7-9月期は、思い切って損失も計上しておく。マーケットだって、どうせこの期は最悪の状況であったことは織込み済みだ。

思い切ってスッピンの素顔を公表し、後できっちりしたメーク顔を出せば、それはより美人に見えるというもの。ゆえに、期末のwindow-dressing(財務諸表のお化粧と呼ばれる)は薄化粧で、というのが最近のトレンドなのだ。でも12月期末のクリスマスパーティーには、勝負服着て、ヘビーメークだ。

さて、金市場のほうは、NY過熱、アジア中東冷ややか、と対照的だ。NY先物買い残高は過去最高の600トンに近づく勢いで過熱感も極まれりという感じだが、対して、ドバイ渡し、香港渡しのロンドン渡しに対する価格差がディスカウントでマイナス50セントになっている。これは、ジャブジャブの現物供給過剰(還流が急増、新規需要は急減)を意味している。4-6月期には過去最大の金需要を記録したインドも7-9月期は急減が予想される。

筆者が述べてきた"現水準は需給ファンダメンタルズの裏づけのないという意味でバブル"との見立てが数字で検証されたと思う。金市場も、今の実態を"告白"して、個人投資家の過度の期待感を戒める時期と感じる。

2007年