豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 商品価格急騰で本当にインフレになるのか
Page984

商品価格急騰で本当にインフレになるのか

2011年1月17日

先週金曜日発表の米国消費者物価上昇率は0.5%。コアで0.1%。著変無し。
2007年以来の消費者物価上昇率を国別にみると、

インド 43.3%
ブラジル 20.9%
中国 15.0%
英国 12.0%
米国 8.2%
EU 7.9%

食料品購入が家計支出に占める割合は、欧米で10-15%、BRICsで50%程度まで。アフリカになると75%に達する。

では、本欄でもこの2回述べてきた資源価格上昇はインフレに繋がるのか?日米以外の国々ではインフレ懸念が生じている。米国に関しては、失業率が9.4%と高く賃金上昇の可能性は低い。設備稼働率も低い水準である。要は生産余力がある状態。インフレよりデフレ懸念に対応してFRBもQE2(量的金融緩和第2弾)に動いている。

これに対して、EU圏でのインフレ率は2.2%と、ECBの目標とされる2.0%を上回ってきた。とくに英国では3.3%に達している。ECBトリシェ総裁も、マーケットのインフレ期待感は無視できない水準で、楽観視は出来ないと発言している。

そして新興国では、もはやインフレ抑制が経済政策優先順位のトップになりつつある。思い起こせば、2008年にも商品価格上昇でインフレ懸念が強まった。消費者物価上昇率が先進国では4.5%前後、新興国ではその倍の水準にまで急上昇した。当時、原油価格は140ドル台にまで急騰していた。

しかし、年後半に生じたリーマンショックによる急激な経済収縮により、インフレ懸念がデフレ懸念に急転した。リーマンショックの「おかげで」、インフレのさらなる加速を回避できたとでも言えようか。

然るに、2011年はどうか。

欧州財政危機がリーマンショックのようにインフレ懸念を押し潰すことになるのか。EU圏内の各国経済はまだら模様。好調のドイツ経済に対し、多くの国は緊縮財政を迫られている。もし欧州財政危機が悪化しなければ、米国経済の好転が同時進行となり、日本以外の先進国はインフレが政策課題になる可能性は残る。

筆者の見方は、資源価格上昇から生じるコストプッシュ型のインフレの可能性は低いと思う。たしかに鳥の目で見れば人口爆発など資源危機の可能性が強いが、今年に限ってみれば、異常気象という振れの大きい現象が主たる要因であること。そして欧州財政危機は構造的問題ゆえ欧州経済の緊縮化はさらに強まること。などがその理由である。

しかし、マネタリーインフレの可能性の方が今後持続的にマーケットに影響を与えるシナリオは別である。無視できない。要は米国のQE2に端を発するマネーじゃぶじゃぶ作戦による実質貨幣価値の希薄化である。

なお、各国の中央銀行は、インフレ、デフレの挟間で綱渡りを強いられている。新興国ではインフレ予防策が効き過ぎると失業(=デフレ)を増やしてしまう。米国ではデフレ予防策が効き過ぎるとインフレを招いてしまう。主要国で、ねじれ議会現象が起こり、政治的に著しく不安定な状況下では、この経済政策リスクが2011年の最大のリスクではないだろうか。金高騰も結局はその政策不信を映す現象と見ている。

さて、今週末は「草食投資隊」を名乗る渋澤健氏(コモンズ投信会長)、中野晴啓氏(セゾン投信社長)、藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス取締役CIO)のトリオと共同セミナーを日経ホールでやります。

行司役は鈴木亮日経マネー編集長。題して「GOLD & GREEN キラリと輝く投資の心構えを語ります」。23日(日)14時から。定員90名。申込はこちらから。
http://www.saison-am.co.jp/seminar/shusai20110123.html (現在公開されていません)

このメンツとは波長が合って、これまでも数回、檀上マイク奪い合い合戦やってきました。草食系投資と言う言葉も筆者が2年前から標榜していました。たぶん午前中ガーラ湯沢で 一滑りしたあと、会場にスキーウエアーで直行することになりそう(笑)。筆者は例によって ぶっちゃけ本音トークに徹します。

なお、ツイッター(jefftoshima)開始して10ヶ月目でフォロアーが4000人突破しました。3000人越えたあたりから、商品、FX分野に限らず、自己増殖的に増加。「得意分野は、食べ物系、スキーゴルフ系、猫系。金とか経済にも興味持ってます」というノリで楽しみながらやってます。ブログとは別世界。フォロアーは圧倒的に20―30代前後と若い層。ツイッター未体験の読者は、下記サイトの「検索」欄に、jefftoshima とインプットして、まずは覗いてみてください。
http://twitter.com/

2011年