豊島逸夫の手帖

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日本再生の為にリバランスの金売り、日本株買いを

2011年3月18日

最近セミナーで、金高騰でポートフォリオの割合が30ー40%になってしまってどうすべきか、という質問を受ける。筆者のアドバイスはリバランスの売りなのだが、問題は次の草鞋を脱ぐ適当な宿が見当たらないことであった。なんせrisk - off(リスク回避)で総売りの流れだから。

しかし、今回の日本有事で、日本人個人投資家として出来ることを考えた時、ここは日本再生を信じて、それを行動で表すこととして日本株買いを薦めたい。金が史上最高値圏にあるということは純金積立保有者はまず儲かっているはず。その一部を取り崩して、例えば一万円程度の単位から始められる長期積立方式投信とかインデックスとかはどうだろうか。

さて、マーケットだが、もはやブログではカバーできないほど新たな動きが次から次へ。この原稿を送ろうと思った瞬間に、G7円売り協調介入の報が飛び込んできた。当面ツイッタ―主体にならざるを得ない。幸いブログ読者のツイッタ―参加が筆者の呼びかけで激増している。

昨日も原稿執筆中に円が76円をつけた。速報で詳しく情報も把握できていなかったが、その後いろいろ調べてみると、どうやらNY引け後、極東オープンの取引が最も薄い時間帯を狙って、ヘッジファンドがミセスワタナベのストップロスを意図的に狙ったという説が有力である。日本の保険会社の外貨建て資産のレパトリというのは、その仕掛けの口実に使われた感がある。

鳥の目で見れば、円安を示唆する要因が多い。貿易収支は縮小傾向。追い打ちをかけるように大震災で製造輸出産業の生産設備に打撃。そして例の超累積財政赤字に天文学的な復興コストが重くのしかかる。

なお、ケインズはこう言った。「砂漠に穴掘って、それを埋める作業を繰り返すことでも有効需要を産む。」

壊滅的な打撃を受けた東北北関東のインフラの復興は大規模な有効需要を生み出す。私の福島の知り合いでも建設関係とか現場労働者たちはこれから大忙しである。ここから経済の乗数的波及効果が生まれる。供給過剰、需要不足の需給ギャップによるデフレに陥っていた日本にとっては、未曾有の危機を経済の再生のキッカケとする機会にもなり得るわけだ。

それを国債増発で賄うことになろうが、事ここに至っては止むをえまい。そこで米国サイドでは、日本の保有する米国債を売って復興予算に充当するのでは、という観測がマーケットの不安要因ともなっている。
米国債の保有状況は

FRB 1兆1080億ドル
中国 8960億ドル
日本 8770億ドル

しかし、この説は非現実的だ。日米共倒れとなる。米国はドル金利急騰、QE3発動を強いられよう。日本は日米共同で有事対応が必要な時期に、米国との経済摩擦に火を付けることになる。そもそも日本は1400兆円の個人金融資産で賄える。

話題は変わるが、リビア情勢も緊迫している。米国が一転、飛行禁止区域設定、空爆も辞さずと、反撃態勢に転換したのだ。原油価格は急騰。中東とジャパンは同時並行でリスク要因として膨らむ。

福島原発に関しては、発表された現場写真は衝撃的。これで、いくら冷静に人体に影響は無いと専門家が説いても、一般市民の不安が増すのはやむを得ない。

放射線高濃度の現場で決死に挑む方がたには、本当に頭が下がる。NHKインタビューでも、東電の現場社員の奥さんの話が特に印象に残っている。米国メディアでは「果敢な50名」と称賛。日本では東電幹部を責める報道ばかりだけど、現場の社員に同情的な記事はあまり見当たらないね。

感動と云えば、女川で中国人研修生20名をいち早く高台に誘導後 行方不明になった受け入れ会社の専務さんの話が、北京では大きな感動とともに伝えられている。

なお、福島原発の実態に関しては、欧米メディアのほうがストレートに論じている。最終的に現場撤退となろうという予測。ただ、過剰反応的記事も多い。NYタイムズあたりでも、米国本土に微量の放射能飛散可能性の記事がイラスト入りで出ているので、早速オバマが記者会見で明確に人体へのリスクを否定した。在日米国人が離日する現象に関しては、個人が決めることとして決して離日勧告などには言及せず。これがマーケットには安心感を与え、NY株式市場も素直に反騰した。オバマのスピーチと、相変わらず目が定まらない菅首相の国民へのメッセージを、いやでも比べてしまう。

最後に、金は1400ドル前後で比較的に安定した動きです。リスク回避で金を売る人、リスク分散で金を買う人が交錯してます。

3連休に入りますが、後はツイッタ―で刻々変わる情勢などフォローしてください。

2011年