2011年12月26日
今年を回顧する時期となった。
2011年は金市場にとっても激動の一年。そこで10大ニュースを纏めてみた。
- 金価格、史上最高値1900ドル突破。後、1500ドル台まで急落。
1500ドルでも歴史的高値圏なのだが、今や、1500ドルがレンジの下限になってしまった。1500ドルまでの上昇は新興国、外貨準備など長期保有の買いに支えられているのだが、1900ドルに至る過程は先物主導のバブル的な様相であった。
- 公的部門金購入が年間400トン超の見込み
リーマンショック前には年間500トン前後の売り越しが続いていた公的部門が、今年は、400トン程度の買い越しに転じた。韓国、タイ、メキシコ、ロシアなど新興国中心に米ドル、ユーロに偏った外貨準備を金や円にシフトさせる動きが顕在化。
年間2800トンの生産量の金市場に、500+400=900トンの変化は需給の景色を変えた。
- 中国、インドの年間金需要が1700トン超え。
足元では経済減速基調だが、通年で見ると、インド1000トン、中国700トンの大台突破は確実。この2カ国で年間金生産量の6割を買い占めたことになる。
- ニクソンショックから40年目。金が通貨として復権へ。
金本位制は机上の空論だが、量的緩和による通貨価値の希薄化により、「刷れるドル、刷れない金」の違いが顕在化。金価格が上がるというより、通貨の価値が下がったというのが金市場に於ける実感。金廃貨(demonetization of gold)で金からドルへのシフトの時代から、対外準備資産へ金を組み入れる時代に転じた。
- JPモルガンチェースが金を金融取引の担保として認定。
これはプロっぽい話題ではあるが、欧米で金が金融取引に於ける適格担保として活用され始めたことは、金がコモディティー(商品)からマネー(金融商品)としての色彩を強める流れを象徴する出来事であった。
- 金ETFの時価総額がNY株ETFを抑えてトップに。
金というコモディティーを有価証券化したETFの売買量がSP500株価指数に連動するETFを上回るという、まさに株から金へのマネーシフトを如実に示す現象であった。
- 過去最大級の世界的金リサイクルブーム
日本でも金買い取りブームがワイドショーネタにもなったが、世界的にも「腐食せず地上に残る」金が高値に刺激され市場に還流する動きが加速。その総量が年間1700トンに接近。金価格急騰にブレーキをかける結果となった。
- 金プラチナ価格逆転現象
東日本大震災により、自動車排ガス清浄化触媒が主たる需要である産業用素材としてのプラチナ価格が軟調に転じた。一方、金は「有事」に買われることで、金プラチナ価格差が逆転するに至った。構造的な需給要因に根差すので、単なる投機の悪戯の結果とはいえず、根が深い現象だ。
- 銀急騰、急落
こちらは流動性の少ない市場に起きた正にバブル的出来事。銀価格は20ドル台から40ドル台まで何でもあり、の一年であった。「貧者の金」とも云われるが、中国でも、所得水準に見合った投機手段として人気化した。
- ポールソン、ソロス 金売却
アイコン的なヘッジファンドが、相次いで金売却に走った。株の損失を埋め合わせる益出し売りである。信用収縮の中で欧州系銀行が保有金の換金売りに動いたことも年末にかけ金下落に拍車をかけた。
以上、振り返ってみると、金高騰の背景には市場の構造的変化が生じており一過性とはいえない。とはいえ、金の金融商品化が価格のボラティリティー(変動性)を高める結果となっていることも鮮明となっている。