豊島逸夫の手帖

Page1038 Jカーブでジャスミン革命を読む

2011年4月22日

世界のマーケットはイースターでお休み。こういうときは鳥の目で見なおすとき。

2010年11月29日。中東ジャスミン革命勃発2カ月前のこと。リビアの首都トリポリに欧州、アフリカの指導者たちが集い、第三回EUアフリカ・サミットが華々しく開催されていた。カイロ、マドリッドに次ぐ開催地として選ばれ、開会演説の役割も廻ってきたカダフィーは得意満面。「我が国は北アフリカのgate=門。この会議がEUとアフリカの協力、友情、開発、そして平和の架け橋となるであろう」とぶち上げた。

欧州側から見れば、あえてリビアでの開催に合意したのは、石油利権に対する配慮だ。英BP、ENI社(イタリア)、レプソルYPF社(スペイン)、トタル社(フランス)などの欧州系石油資本が生産する良質の原油供給に、欧州各国は輸入依存度を高めてきた。

2003年、カダフィーが大量破壊兵器(WMD)放棄宣言で見せた、一見しおらしい態度を欧米側は「殊勝である」と評価。とくに米英は、「WMD撲滅」の大義の元に決行されたイラク侵攻が、カダフィーの決断を促したと自画自賛的な解釈。テロの懸念が薄れた国家に対する復興開発援助、北アフリカの平和維持の名目で、まずはBPに最もおいしい利権を獲得した。

リビア政府の関与の下で実行され、270名の死者を出したパンアメリカン航空103便爆破事件にも敢えて目をつぶることと引き換えに石油利権を確保したことで、ブレアー首相の「deal in the desert=砂漠の取引」とも云われた。

1038.gif鳥の目でジャスミン革命を俯瞰すれば、新興国の発展段階に共通するJカーブ現象に注目したい。縦軸に国の安定度、横軸に国の開放度を示すグラフを作ると、おおよそJの字に似たカタチになるという考え。

初期段階では、強権独裁政治により、ある程度の国内の安定が維持されるが、民主化の動きが始まると、一時的に不安定状態に陥る。しかし、やがて民主国家樹立の暁には長期安定路線に入るわけだ。

北朝鮮が初期段階の国。その段階で挫折した例が旧ソビエトやシャ―時代のイラン、旧ユーゴスラビアなど。そして現在の中東北アフリカは、正にJカーブの凹みの真っただ中といえる。なお、南アやトルコは、一歩先んじて凹み圏を脱出している。

リビアは初期段階挫折組の可能性があるが、他の中東諸国はJカーブを辿るとすれば、現在の原油価格騒擾も長期的安定に向けて避けては通れぬ過程であろう。

余談になるが、Jカーブは飲酒と健康の関係について「適度の飲酒は健康に良い」という議論の論拠にも使われる。横軸にアルコール消費量、縦軸に生活習慣病のリスクを取ると、やはりJカーブになるのだ。

非飲酒者に比し、少量飲酒者の疾患リスクは低いが、さらに飲酒量が増えれば、今度は非飲酒者より、虚血性心疾患、脳梗塞、糖尿病などのリスクが高まることが知られている。

そこで結論は、適量の飲酒は健康に良い、ということ。断っておきますが、あくまで「節度ある適度の飲酒」ですぞ!!

さて、話を中東情勢に戻そう。ジャスミン革命で、漁夫の利を得ている国がイラン。もっとも危機感を強めているのがイスラエル。イスラエルはエジプトのムバラク政権崩壊で、ガザ地区とエジプトの国境封鎖が尻抜けになることを恐れる。中東の火薬庫ガザ地区は、人口の2/3が第一次中東戦争(1948年)により発生したパレスチナ難民とその子孫たちで構成される。パレスチナ過激派ハマスの本陣でもある。そのハマスを支持すると見られるのがエジプトの有力な反体制派のムスリム兄弟団だ。彼らがエジプト連立新政権などに参加すると、ガザ地区との国境封鎖解除などの措置も視野に入る。

そしてハマスの後ろ盾は、「イスラエルを世界地図から抹消する」と公言して憚らない大統領を持つイランである。さらにイスラエルと国境を接するレバノンでは、イランの支援を受けた急進的シーア派組織のヒズボラが擁立する首相が誕生。同じく隣国のシリアは、イランの友好国でハマスを強く支持しているそのシリアに向けて、イランは軍艦二隻を、スエズ運河経由でシリアに派遣した。

一昔前ならば、ここで米国が調停役に廻り、事態の収拾に積極的に動いたであろうが、現在のオバマ政権の腰は引けている。米国がイラク、アフガニスタンから撤退モードに入り、中東から徐々に手を引く戦略に転じた矢先の今回の中東緊迫。

米国は、やや国際社会から引き籠りの気配。それに対して、この機を利用して中東に於ける存在感を強める戦略を露わにするイラン。

そして忘れてはならないのが中国の動きだ。米国が再び中東方面に軍事配備を強化せざるを得ない状況になれば、極東方面が手薄になるは必至。これも漁夫の利であろうか。ただし、中国国内のジャスミン革命の萌芽も、もはや無視できない。

当局の監視は強まり、中東情勢を多少なりとも喜ぶような仕草を見せれば、直ちに公安にマークされるという。「お茶を飲みに来ませんか」と、公安からの「お誘い」があればアウトである。

ただし、中国とエジプトを同列に論じることも乱暴であろう。経済、国力が違い過ぎる。中国には既に富の蓄積により「失うものが多い」階層の人達も急増中だ。格差という大きな問題も抱えるが、経済のインフラ構築は急ピッチで進む。

中国の場合は、「民主化革命」というより土地の所有権や賃上げなど具体的な経済問題の解決を求める「具体的改革」の動きとなると筆者は見ている。

さて週末の日曜日は震災復興セミナーin博多。東京、関西は読者数が読めるのですが、福岡は何人くらいか見当もつかなかったのですが、熱いメッセージをしたためた応募メールが順調に集まりました。

そして翌月曜日早朝にはモーニングサテライト生出演。(地方はBSジャパンでも見られます)。朝5:45から6:40までフルに出ます。
http://www.tv-tokyo.co.jp/nms/

それから大幅刷新の日経電子版マネーページが25日月曜日からオープン。昨日、新コラム(「金のつぶやき」仮題 毎週更新)の第一回原稿を昨晩あげました。最初のテーマは「金高騰 7つの理由」で2000字ほど。これはブックマークだよ!

なお、日経マネー本誌のほうの連載コラム「現場発 国際経済を読む」は昨日発売の6月号ではお休み。その代わり、「がんばろう個人投資家」のメッセージをP24―25に書きました。最新号の目次は↓
http://www.nikkeibp.co.jp/article/mon/20110420/267577/mokuji.pdf

最後にキャンディーズのスーちゃん。ホントに逝っちゃったのだね(涙)。可愛らしさと清潔感のある色っぽさが好きでした...。

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