2011年9月27日
量的緩和なのにマネー不足
金は一時1600ドル割れ。銀は一時30ドル割れ。
ギリシアから飛散した危機感が新興国まで達し マーケット騒擾。
市場が疑心暗鬼になると銀行の資金調達もままならずマネー(流動性)が不足する。量的緩和で大量のドルがばら撒かれているのに銀行や投資家により"退蔵"され、市中に出てこない。こうなるとゴールド(金)よりもキャッシュ(現金)だ。現金化して経済有事に備える。かくして マネーの雨宿り現象が増幅されている。
しかし雨宿りはあくまで暫時 驟雨に見舞われた道路から軒下に身を寄せる避難行動だ。激しいスコールだが、いずれ過ぎ去る。先日 台風が首都圏を直撃したとき、早く帰宅に動いた人達が新宿駅などで足止めを食い、結局、職場に9時頃まで留まった人達と帰宅時間はさほど変わらなかった。いずれ台風は過ぎ去るから、それから行動を起こしても遅くないと読んだほうが正しかったわけだ。
さて 本日の日経電子版"金のつぶやき"コラムでは、金市場の内部要因について書いたので、こちらではマクロ経済要因について述べてみたい。
ギリシア問題は 三段階に分かれる。
1. ギリシア国内の火事の火消し作業
2. 近隣への延焼を防ぐ対策
3. 火事再発を予防する対策
1については 消化作業が国民の強い抵抗にあっている。江戸時代の火消しと同じで、家を壊すような痛みを伴う緊縮方式なので、敢えて消化作業を妨害するストライキなどが頻発して 今やギリシア国内は機能マヒ状態だ。
2については ECB(欧州中央銀行)がイタリア、スペイン国債を買い取ることでfirewall(延焼防止用の壁)を構築中だ。更にEFSF(欧州金融安定化基金)の機能を拡充してECB国債買い取り作戦を側面支援、更にギリシア国債など大量に保有している銀行への資本注入も検討される。9月29日にドイツ議会下院がこのEFSF機能拡充につき、採決するので、その結果が注目だ。
3については ユーロ債など大掛かりな共同債券発行を含め、財政機能も欧州として統一する動きが本当に現実化するか否か。各国の主権を放棄するに等しく、実際に抵抗は強く、容易ではない。しかし金融政策だけではなく財政政策も一体化しないと、当面の財政赤字累積問題が仮に鎮静化しても、また別の国で再燃するは必至。
このように現実は厳しい。
にもかかわらず政策対応の足並みが揃わない。中世から遺恨の残る国々がユーロという錦の御旗の下に団結するという理想は美しかったが、実際問題としていかに難しいことか。
時間と忍耐の両方が切れかかっている。
10月半ばまでにギリシア救済案を纏めないと、本当に時間切れでアウトになる。土壇場まで各国の調整が遅れ、土俵際で突拍子もない政策対応が飛び出すのではないか、との疑念が市場参加者の頭を横切り、不安感を増幅させている。例えば、直接的な売買規制などの緊急対応策で "劇場のシンドローム"で言えば、非常出口を閉鎖されることだ。あるいはサッカーのゲーム中に、唐突にゴールポストの位置を変えてしまうような措置。法律解釈の仕方で、如何様にも変えられるものだ。
同時並行的に 緊縮政策に喘ぐ国民の忍耐も限界に近づく。
時間と忍耐が切れたときに、マーケットのリスクはピークを迎えるだろう。今の株商品総売り状態は、そのピークを予見して先取りした動きと言えよう。