豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 先物市場買い越し残高急減は買いのシグナル
Page1084

先物市場買い越し残高急減は買いのシグナル

2011年10月4日

先週末CFTC(米国先物取引委員会)から発表された金の買い越し残高は 分かり易く重量表示にすると70.7トン急減して397.5トンに。400トンの大台を割り込んだ。
ピークは800トン超えであったから かなりの規模の表層雪崩がおきて投機マネー(投資マネーではない)が金先物市場から流出したことが確認されたわけだ。
このような現象に接して、素人は"すわ 金バブル崩壊"とばかりに売りに走る。そこが仕手筋の狙い目だ。プロにとっては バブル的な買いが一掃されて 根雪が地肌を見せているので 新規買いを入れやすい。素人筋が売ってくれれば シメシメである。

ジムロジャースは筆者との対談で いつも口癖のように"私は混み合っている市場が嫌いだから寄りつかないようにしている"と語る。新興国市場の旗振り役みたいな存在で自ら居を米国からシンガポールに移した彼が 今年は新興国株を売り続けていると語る。その理由が"too crowded" 混み過ぎている、の一言。
金についても 商品ブル(強気派)の象徴みたいな彼ではあるが、前回8月の対談時(相場が1800ドル台)"今 金は買わない。下がったら買う。理由は too crowded"

そして2か月が過ぎ 金市場は 先物買い残高急減が示すとおり、かなり すいてきた。筆者へのメールでも"待ちに待った調整到来"と書いてきた。

プロにとっては史上最高値のほうが買い残急減より気持ち悪いもの。
日経電子版"金つぶ"9月27日づけ"金銀急落の真相 表層雪崩と買いシグナル"にも詳述したことだ。
なお その時にも書き添えたが 買いが減った一方で 空売り(ショート)が増えている。これが潜在的買いのエネルギー蓄積と書いたが そのエネルギーが昨日は早くも噴出した。売りポジションの買い手仕舞いである。ショートカバー ラリーといえる。安値圏で新興国の現物買いが下値をガッチリ ガードして、先物売りの投機筋もこれ以上下げられぬと見れば、一斉に買い手仕舞いに入る。問題はショートカバーが一巡した後に、直ぐフォローの新規買いが入るか。ここは 虫の目で見れば、今週金曜発表の雇用統計次第であろう。

セミナーでは しばしば"金価格を見る勘所"の一つとして金先物買い残高を挙げてきたので、参加者なら"あのことか"と合点が行くと思う。

2011年