豊島逸夫の手帖

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世界同時多発不安現象

2011年3月24日

FukushimaとLibyaに加え、昨日の欧米市場ではポルトガルと米国住宅市場不安が再燃。中東に日米欧の4地域で同時多発不安の様相となった。ユーロ高が続いていたが、ポルトガル議会が経済緊縮案を否決したことで一転売りに。かといって米ドルも買いたくない。ドル円には協調介入の壁。こうなると無国籍通貨=金にマネーがシフトするのは当然の流れか。1440ドル突破の場面も見られNY引け値ベースでは過去最高。

欧州財政危機に関しては、2月14日付「エジプトの後は欧州財政問題に戻る気配」に詳述したので参照されたい。エジプトの後にリビアとジャパンが入ったが、ここにきて、やはり欧州が浮上してきたかという感じ。

一方、米国経済だが、昨晩NYのアナリストたちをアッと云わせたのが新築一戸建て販売戸数統計。事前予測は年換算29万戸へ増加のところ(これでもリーマン前の100万以上に比し超低水準なのだが)、蓋を開けて見れば、過去最悪の25万戸へ激減。アナリスト予測がこれほど派手に外れるのも珍しいとマーケットでは話題になるほど。先週から中古住宅販売など米国住宅関連指標の悪化が続いてきたので、不動産市場のdouble dip(二番底懸念)が台頭している。

住宅販売不振続きの背景は、
1)差し押さえ物件が徐々に市場に還流してきた
2)住宅金利が4.2%から5%近くまで上昇してきた
3)同時多発不安で人生最大の買い物をする気になれないという心理
などが挙げられる。

こうなるとヘリコプターベンはドル札をばら撒き続けねばならぬが、かといって原油など物価上昇傾向も無視できず、おいそれとQEのバルブを開けっぱなしというのもマズイ。FRB内でも超金融緩和に対する慎重論も見受けられる。実に難しい綱渡りを強いられているベン様。同情もするのは、誰がやったってインフレにもデフレにもならない舵取りなど所詮無理。

金が売られるシナリオはインフレでもデフレでもないヘッジ不要の経済(=ゴールディロックス)だが、まだ遠い先の話のようだ。金価格を見る際のマクロ経済面でのキーワードは実質金利である。出口戦略発動で実質金利がプラスに転じるときこそ金が下がるときだから。

なおバークレーズキャピタルの投資家意識調査によると、ゴールディロックス シナリオを信じる=7%、ギリシア、アイルランド、ポルトガルが3年以内にデフォルト/債務リストラと見込む=50%、ユーロ解体となると、さすがに2%程度という結果になっている。↓
http://www.cnbc.com/id/42188147

筆者の金価格見通しに関しては、日経WEB版の「相場を読む」コラムに出てます。↓
http://nvmol.nikkei.co.jp/souba/index.aspx (現在公開されていません)

金が史上最高値騒動のときは、釘刺し役です。ただし、冒頭に述べたような構造的状況下で高値圏は続くけどね。そう下がらない。今年1月のように下がっても直ぐに買われる。

それから筆者が注目しているのは、米国ETF市場で目下、最も資金流入が増えているのが、日本株TFという現象。バロンズ誌とかバフェット氏の積極論が効いているのか。日本株ロング、円ショートのポジションが人気のようだ。

銀も31年ぶりの高値。
昨日時点での、USBの投資家調査による今月末の銀価格予測。

30ドル以下 7%
30-35ドル 46%
35-40ドル 32%
40ドル以上 14%

さすがにボラ(価格変動)高く警戒感強まるというコメント。
ここは金よりもっと大きな釘が必要。

さて、国内では福島原発は合併症がゆゆしい。今日は特に終日 目が離せない。
そして 国産野菜か 中国産野菜か というのもビミョーな話。
これは1月14日づけ"量的と質的な食糧危機"に書いたことでもある。単に生産量が新興国の需要に追いつかない とか 生産国の政情不安とかという問題だけではなくなってきている。作ればいいという問題ではない。

2011年