豊島逸夫の手帖

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金プラチナ価格逆転現象はいつまで続く

2011年9月28日

本稿執筆時点(9月28日早朝)で金1650ドル、プラチナ1560ドル。価格逆転して以来、値差が遂に90ドルにまで拡大してしまった。欧州財政危機悪化に発するリスク資産総売りの波に金もプラチナも巻き込まれたが、プラチナの下げのほうが厳しく、回復のペースも鈍い。

キッカケは東日本大震災であった。自動車生産台数が激減したことでプラチナの需要が減少。特にプラチナは自動車触媒需要に依存する傾向が強いので、この災害は効いた。しかしその後、自動車生産も持ち直し、南アの鉱山ストライキもあって、一時は価格回復の兆しも見え始めた。その矢先に欧州債務危機による景気後退の傾向が顕著となり、プラチナ価格のアタマを叩くことになった。
金も換金売りの津波の影響で売られたが、それまでの急騰の"貯金"が残っていたので、下がったとはいえ1600ドル台という高値圏を維持している。(1600ドル台で"暴落"と感じられるのも、考えてみれば、高値慣れしてしまったと感じるが。)

問題は、この値差逆転現象がいつまで続くか。
時期的には欧米経済が本格的に回復軌道に乗るときだ。
持続的に欧米マクロ指標が好転すれば、ヘッジ資産としての金の投資需要は減少し、プラチナの産業用需要は増加する。

しかしFRB自ら、米国経済の"深刻な下振れリスク"をFOMC声明で認めざるを得ない状況で、しかもギリシャ危機が劇的に改善する時は、果たしていつのことか。
FRBがゼロ金利を2013年前半まで継続と、今回のFOMCでも再確認しているので、 それまでは金価格が高値圏に留まりそう。対してプラチナは、南ア鉱山ストライキなどのサプライショックで一時的に急騰局面もあろうが、そこは投機筋にとって格好の"吹き値売り"のタイミングとなろう。更に金反騰のケースで連れ高のシナリオも考えられる。しかし、金よりプラチナの価格が持続的に順ザヤに戻るのは、先のFRB声明を見ても、2013年にずれこむのではなかろうか。

外貨準備としても、金が買われるが、プラチナは買われない。
鳥の目でみれば、プラチナには新規産業需要開発が見込まれるので、金より高い水準に戻るであろうが、時間はかかりそうだ。
2008年にはプラチナ価格が2200ドルから一気に790ドルまで暴落したことをマーケットは忘れかけているようだが、流動性が小さい市場の"劇場のシンドローム"現象は、殊のほかキツイことも留意しておこう。

なお、プラチナにもETFが組成され上場されたことで、投資需要の裾野が広がりつつあることは、これまでに無かった状況として注目。価格下落に際して投資家の押し目買いが入り易く、下値を支える効果があることは間違いない。

結論としては、プラチナの短期売買は難しいが、長期保有を前提とすれば "buy and forget "。買って忘れるくらいの気持ちで臨むことが必要だ。

さて、筆者独立後 最初のセミナーが広島となりました。

開催日時 10月8日 14:00-16:00
会場   NTT基町クレド 11階 ラウンジ


主催は三菱マテリアルです。

これからは、セミナー終了後も、アタフタ帰京するスケジュールではなく、参加者の皆さんと歓談できる余裕も出来そうなので楽しみです。

それから 明日9月29日、フジテレビ系 めざましテレビで、金買い取りブームについて中国取材も含め放送予定。筆者も昨日、事務所でカメラ取材受けました。朝7時20分前後に、ちょっぴり出る予定です。

2011年