豊島逸夫の手帖

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通貨安競争に変化の兆し

2011年1月18日

新興国へのマネー流入に変調が生じつつある。この2年間に主要新興国通貨は対米ドルで目覚ましく上昇した。


南ア/ランド 47.6%
ブラジル/レアル 39.0%
チリ/ペソ 25.7%
インドネシア/ルピー 22.3%
韓国/ウオン 22.2%
タイ/バーツ 14.8%
インド/ルピー 8.2%
ロシア/ルーブル 3.3%
トルコ/リラ 2.3%

この新興国通貨高の流れに乗り、低利の米ドルを借り、新興国通貨で運用するキャリートレードも加速した。いわゆるホットマネー流入である。ここで新興国通貨当局はジレンマに直面する。

通貨高を放置すれば、自国製品の国際競争力が弱まる。さらに通貨高はキャリートレード経由で過剰流動性を発生させバブルを招く。ところが通貨安となると、輸入品価格が上昇して 新興国のインフレ懸念を加速させる。そこで、自国通貨安で輸出競争力を維持する政策効果と、自国通貨高でインフレを抑制する政策効果の狭間に通貨当局が揺れている。

これまでは、資本流入規制や為替市場介入を通じて自国通貨高を食い止める当局のバイアスが強かったが、徐々にその姿勢に変化の予兆も感じられる。今後、新興国のインフレが加速すれば、政策優先順位として、インフレ抑制のための通貨高容認に転じざるを得ない可能性も見えてくる。しかし、これではホットマネー投機筋の思うつぼ、ともなる。

利上げ、通貨高によりインフレを抑え込み、財政出動で輸出減を補うという、金融引き締め、積極財政のポリシーミックスも考えられよう。

しかし、いずれにしても政策当局にとってはヒヤヒヤの綱渡り。ホットマネーと中央銀行の神経戦はまだ続きそうだ。

さて、恒例の日経プラスワンフォーラムが、1月30日東京、2月6日大阪で開催されます。とくに後半の「本音ぶっちゃけトーク」では、相方のFP深野さんと、台本なしのオフレコで今回も喋りますよ。どういう展開になるか、本人にも分かりません(笑)。
くわしくは、こちらから。↓
http://adnet.nikkei.co.jp/e/event.asp?e=00318

金価格は現在調整モードにありますが、日経フォーラム前後には新高値を更新するというジンクスが今回も生きているか否か、注目しております。

2011年