豊島逸夫の手帖

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良い金利高、悪い金利高

2011年2月8日

エジプト発・地政学的要因は、やはりマーケット材料としての鮮度が早くも落ちてきた。代わって、米国債10年債の利回りが3.65%にまで上昇してきたことが注目されている。

株式市場では、これを景気好転による「良い金利高」と解釈する。金市場は、米国債過剰発行、バーナンキの追加的量的緩和の結末としてインフレ懸念が高まっているゆえの長期金利上昇という「悪い金利高」と解する。(経済学の教科書などでは長期金利↑=投資家のインフレ期待感の表れと説明される。)

実態としては、良い金利高と悪い金利高の共存状態というところであろう。ただし、鳥の目で見れば、3.65%も、ドル長期金利としては極めて低水準ではある。金利水準の正常化の過程とも言えよう。

さて、マネーの流れを見れば、新興国からの資金流出が顕著である。先週1週間で、新興国株式ファンドから70億ドルものマネーが流出したという。3年ぶりの流出規模で、エジプト問題と新興国インフレ=金融引き締めを嫌気と説明される。

新興国を逃げ出したマネーが向かっている先が、米国、欧州、日本など先進国株式ファンド。ここでは66億ドルの資金流入が見られる。このグロ―バルなマネーの流れの変化は、本欄で新年1月6日にすでに述べたことだ。

(以下引用)
今後の注目点は昨日も書いたことだが、新興国利上げ引き締めモードで、米国へマネー回帰するか。新興国>先進国が、新興国<先進国の図式に転換するか。欧州財政危機、米国ねじれ議会のよる政策不安定性などを思えば、そう簡単に転換できるかと感じている。新興国バブル破たんではなく、新興国経済成長が高速道路から一般道路に降りてくる程度の話だろう。
(引用終わり)

そこで述べた筆者の見解は今も変わっていない。商品から株式へのマネーUターン現象も然り。鳥の目で見れば、商品セクターへのリスク分散運用の流れが変わるはずもない。オーバーウエイト気味のセクターからアンダーウエイト気味のセクターへのポートフォリオ・リバランスの過程である。

ちなみに商品セクター内では、先行した金の価格が急騰したゆえ、ポートフォリオ全体に占める金の割合が長期目標を大きく上回る結果となり、そこでリバランス調整のための金売りも最近は頻繁に見られる。

個人投資家のレベルでも金高騰で純金積立の残高がポートフォリオの10%を大きく超えてしまったのでどうすべきか、という質問も頻繁に出る。筆者の答えは、その場合は売りなさい、ということだ。ただ、それで次に何を買うかという次の問題の答えが難しいのだけど。

なお、NY金先物買い越し残高がさらに29.2トン減少。470.3トンまで低下してきた。ピークでは800トン超えていたから、相当な規模で買いポジションが手仕舞われたことが分かる。先週木曜日の急騰で空売りがかなりストップロスを入れたから、現時点では買い越し残高もすでに増えていることであろう。

ここまで減るとジェフの目もギラギラしてきた。まだ調整期間中なれど、表層雪崩もピークは過ぎた。

2011年