豊島逸夫の手帖

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膨張するマネー 限りある資源

2011年1月24日

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この図は「金を通して世界を読む」25ページの図表1-6である。今また、このマネーと資源の構造が顕在化しつつある。2011年バージョンは、Q2(量的金融緩和第二弾)で膨張するマネーが、異常気象で供給ショックに見舞われている資源価格を押し上げていること。その結果インフレ懸念が新興国から先進国にも徐々に波及しつつある。

しかし、虫の目で見れば、この2011年バージョンの構図を先取りしたファンド筋の投機的資源買いがピークに達し、すでに利益確定売りが出始めている。例によって「噂で買ってニュースで売る」手口だ。

とくに先行した金価格などは、図の上の水色のバブルっぽい部分が剥落(はくらく)=新雪表層雪崩を引き起こした。「信用収縮で剥落の可能性」というところは、2011年バージョンでは、Q2で信用膨張が続くと修正せねばならぬ。剥落しているが、それは膨張するマネーの循環物色で他の出遅れた資源価格にシフトしているということだ。しかも金に関しては「剥落」も一巡して、そろそろ新たな新雪が積もり始める気配も出てきた。金ETF残高が急減のあと急増に転じている。

問題は魚の目で見て、水色の新雪部分と緑色の根雪部分の境が何ドルかということ。筆者は現時点で1300ドルと見る。この境は時とともに水準を切り上げている。ダイナミックな動きだ。

さて、新興国はすでに膨張するマネー流入を阻むべく様々な資本流入規制の堤防を築いている。そこで新興国の株より先進国の株にマネーがシフト中だ。

1月6日付け本欄「株高、ドル高、債券安、商品安」に以下のように書いた。
(引用)
今後の注目点は、新興国利上げ引き締めモードで、米国へマネー回帰するか。新興国>先進国が、新興国<先進国の図式に転換するか。欧州財政危機、米国ねじれ議会のよる政策不安定性などを思えば、そう簡単に転換できるかと感じている。新興国バブル破たんではなく、新興国経済成長が高速道路から一般道路に降りてくる程度の話だろう
(引用終わり)

この意味で今週は、本当に新興国<先進国の図式になるか。先進国側の経済の実力が問わる1週間だ。米国FOMC、GDP速報、住宅関連重要指標など目白押しだからだ。ここで米国景況感改善が鮮明に出れば、新興国<先進国のマネーUターン現象が加速するであろう。

昨日は日経ホールで草食投資隊を名乗る渋澤健(コモンズ投信)、中野晴啓(セゾン投信)、藤野英人(ひふみ投信)の面々と、台本無しぶっつけ本番のトークセッション。仕切り役は 鈴木日経マネー編集長。これで4回目の顔合わせだが、すっかり株も金も長期積立という考えで意気投合しているので議論が弾んだ。

なお、草食投資の言葉を最初に使ったのは筆者なので、昨日の隊側から「名誉会長」就任の要請があった(笑)。

終了後のツイッタ―の呟きで筆者が嬉しかったツイート。
「豊島さんの話を聞くのは今日で二回目。初めは日経マネーナイトでした。金投資の話をする人に対して、渋澤さん同様どんな人なんだろうと偏見持ってたけど、話を聞いてファンになりました。金は脇役、積立で、なんて話している人がいたとは」

セミナー会場に着いたときには、鈴木編集長とか渋澤さんが自ら会場で各席に資料など配布していて、まさに手作りセミナー。筆者も浪花節だから意気に感じて乗って喋くり倒しました(笑)。

2011年