豊島逸夫の手帖

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原油急騰の米国経済への影響

2011年2月28日

今週は雇用統計など米国経済関連の材料が多く出る週だ。目下の注目点は、原油急騰でQE2(量的金融緩和第二弾)に対する政策変更が出るか否か。

一般的に原油10ドル上昇による米国経済への影響は経済成長が0.2%減少、失業率は0.1%増加と云われる。これが原油急騰のデフレ効果。一方で、物価上昇を刺激するというインフレ効果も無視できない。しかし、1970年代のオイルショック時に比し、マクロ経済の原油依存度が遙かに低くなっていることも常に指摘される。

そこで、バーナンキが今回の中東騒乱に対して、どのような政策対応をするのか(或いはしないのか)が注目されるので、今週前半の彼の講演が要チェックだ。

さらに週末の雇用統計次第でQE2からQE3への議論拡大がありうるのか。(QE2縮小論は後退した感じだが。)

筆者はQE2予定通り続行。過剰流動性が株、原油、金の価格を下支えすると見る。

なお、欧州財政危機による緊縮政策が厳しさを加えつつある欧州経済は、リビア依存度が比較的高いので、今後の中東情勢の拡大次第で、想定外の経済ショックの可能性も視野に入れておく必要はあろう。(要は、南欧財政危機に加え、泣きっ面にハチという構図だね。これまでカダフィーの強権政治を事実上黙認しつつ、リビア内での経済権益を追ってきた欧州ゆえ、自業自得ではあるが。)

そして注目のサウジ。2月23日本欄「次はサウジ」で、「サウジ国内にも確実に民主化の動きは芽生えていると感じる。国全体としては原油収入で豊かな国ゆえ、当座はカネばらまき戦術で懐柔を図るであろうが、国民の不満の根源を断つことにはならない。」と書いたが、その後、緊急帰国したアブドラ国王は早速3兆円相当のばらまき作戦(社会福祉、雇用、住宅関連支援)を発表した。

しかし、「げんなま」によるミエミエの懐柔策はかえって反発を生む。民衆が眞に求めるのは、参政権、司法の確立、腐敗撲滅である。「人民は改革を求める」というフェースブックには7500人が参加しているという。

さらに中国へのジャスミン革命の波及。先週は中国の若者たちと3時間ほど、じっくりこの問題について本音で議論する機会があった。詳しくは語れないが、確実に浸透していることを実感。ただし、中東に比べれば経済基盤が先行しているので、少なくても就業機会は中東より多い。問題は格差だ。(筆者の印象では、上海は米国に近く、経済がダイナミックだから、頑張ればアメリカンドリームならぬチャイニーズドリームを実現できるかもしれないという期待感が持てる街だ。対して、北京人は、党へのコネなどが無いと階級格差を越えられない政治の街だ。)

中国のジャスミン革命は、「革命」ほど過激ではない「政治改革」のようなシナリオがより現実的なのかな、という感じ。

さて、先週金曜はGFMS CEOのポール・ウオーカーと本音ぶっちゃけトークを2時間ほど。20年来の親友ゆえ、お互い遠慮がない。話題はもっぱらシルバー、プラチナ、パラジウムについて。PTとPDがパリティー(同価格)になる日とか、銀が暴落する日など、刺激的なトピックで盛り上がった。全部で10-12ページにはなると思われる濃いコンテンツは、現在編集進行中の筆者の日経ムック本に採録される。すでにジム・ロジャース対談とか、亀井幸一郎、池水雄一との三者鼎談などは収録済。かなり面白い仕上がりになりそうで楽しみ。

下の写真は、逆光になってしまったが、ポールとの事務所自室での日経対談風景。

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2011年