豊島逸夫の手帖

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LibyaよりFukushima

2011年3月16日

昨晩のNY市場。日本原発懸念から発するリスク回避の動きが中東関連地政学的要因を上回り、原油、貴金属急落。株、商品も総売り。引けにかけて、やや落ち着きを取り戻したが、日本時間早朝になって福島原発4号機火災のニュースが飛び込んできた。

それにしても、NY市場に流れる噂の類はお粗末。
Imminent earthquake warning in Saitama and Chiba(埼玉と千葉に緊急地震警報)とか、TSE will close tomorrow(東証は明日クローズ)とか、流言飛語としかいいようがない。そのような噂で、Japan Pessimism(日本に対する悲観論)が増幅され、マーケットのリスク回避は加速する。株も商品も売られ過ぎ。魚の目で見れば買い時だ。日経の株式欄の個別株価を見ていると、買いたいものばかり。筆者には東証がデパートのバーゲン会場のイメージと重なる(笑)。日本は再出発するのだよ!

ただし、原発だけは要注意。目が離せない。刻々状況が変わるので、ここはツイッターでないと追い切れない。ツイッターでは、team.nakagawaという、東大病院放射線治療担当チームの冷静なコメントがお薦めだ。医師のほか、原子力工学、理論物理、医学物理の専門家がスクラム組んで、今回の原発事故に対して正しい医学的知識を提供してくれている。

地震保険など、地震とおカネの知恵に関しては、日経マネーのツイッターアカウント(nikkeimoney)で、生活投資塾クルーの深田晶恵さん(akiefukata)ら人気FPたちが、業界が言いにくいことをアドバイスしてくれている。

この際、ツイッターやってない読者は、始めるべし。
まずは、www.twitter.com で登録。
そして、検索で、jefftoshima から入ると筆者のアカウントに繋がるよ。昨日はマーケットの話より、地震、原発の話題が圧倒的に多かったけど。

そういえば、ひとつ共感が多かった提案が金融機関の義捐金について。ゴールドマンサックス5億円、シティー2億円、 バークレーズキャピタル2億円とか、冥加帳にお馴染みの名前が並ぶ。

そこで考えた。知り合いの方々が多い東証への提案。テレビに映るアローズに義捐金を貼り出したら?xx証券会社殿 xx億円也 とか。神社の祭礼みたいにね。

さーて、少しはマーケットの話もせねば。
大荒れなのだが、実はアドレナリンが出ない。こんな大変な時に、相場の話などという気分もあるし、リスクに敏感な猫モモはもう居ないし。寂しい...。

それでも、Once a dealer, always a dealer=ディーラーやったら 一生やめられない、ということは本当みたい。昨晩はFOMCがあり、やはり注目して朝3時まで夜更かししてしまった(苦笑)。

そのFOMCでは、例のfor an extended period (実質ゼロ金利を長期継続)という文言が依然残り、QE2(量的金融緩和第二弾)継続確認。

注目の商品高に起因するインフレ懸念に関しては、transitory(一時的)という表現。材料としてはFOMCよりFUKUSHIMAであった。
なんせ、欧米アナリストの友人たちも、明日の福島の天気予報、風向きまで把握していて、ビックリ。

各論で、金、銀、プラチナ、パラジウム、すべて大きく下げた。(買われたのが円と米国債くらいか)。ただ金は換金売りと同時に質への逃避買いが入ったので、1390ドル台に止まっている。(本稿執筆時点 日本時間朝7時)

リーマンショックのときも、まずは株も商品も総売りになり、一巡後、金は買い直され史上最高値を更新するに至った。今回も同じ軌跡を辿りそう。

日本経済も虫の目で見れば減速必至だが、魚の目で見れば、復興需要で10-12月期には成長率上方修正なんてことだって考えられると思う。

それにしても東海道新幹線には、キャスター引いた疎開組の家族が目立つ。筆者の福島の友人たちも、ぼちぼち関東に疎開が出始めた。外国人には帰国命令で帰国とか、大使館業務を福岡に移すとか、本国の家族に懇願されて帰国する子女とか、さまざま。

ジャパンがcontaminated country(汚染国)のレッテルを貼られてしまった。Contaminationという言葉は重い。欧米の報道も、千葉のコンビナート爆発の映像の後に福島原発爆発のニュースを流すから、視聴者は残像がだぶってしまうらしい。

なお、月曜日に書いた「国民が一致団結する最後の機会」に関しては、多くの「強く共感」コメントが寄せられ、嬉しかったです!

最後はツイッターで拾った話。
大抵のお店が品切れの時に「申し訳ありません」とい貼っているけど、うちの近所には「そんなに必要ですか?皆が最低限買えるようにしませんか?」と貼っているお店がある。みんなそれを読んで我に返っている。他の店もできませんか?

2011年