豊島逸夫の手帖

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ECB大盤振る舞いを見透かす市場

2011年12月22日

「金利1%で3年融資します。貸出総額は無制限。適格担保条件も緩和します。」
ECB新総裁ドラギ流の欧州債務危機への支援策。
(貸出金利のベンチマークは政策金利なので1%前後と想定される。)
ECBダムから通貨ユーロの大規模放流が開始された。
そこで「欧州中銀、新たな流動性供給策、銀行殺到、50兆円応札」と今朝の日経朝刊国際面でも報じられている。
欧州系銀行にとっては願ってもない話だ。
1%でユーロを調達して、高利回りのスペインやイタリアの高金利国債で運用すれば、容易に金利差収入を得られる。ECBがお膳立てしてくれたユーロキャリートレードとでもいえようか。ECBとしても、自らスペイン・イタリア国債を買い取ることは「FRBバーナンキ流QE=量的緩和」となりかねず憚られる。しかし、民間銀行に国債を買うようにしかける分には抵抗感も薄い。
マーケットも、スペイン・イタリア国債が買い支えられ利回りが低下してくれれば大歓迎。
しかも、信用収縮で干上がっていた欧州金融市場には、流動性供給という恵みの雨である。
マーケットは一昨日のスペイン国債入札の時点で既に敏感に反応。3ヶ月物利回りが11月の5.11%から1.74%へ、6ヶ月物も5.23%から2.44%までそれぞれ急落。
効果覿面とばかりに欧米株式、商品市場は沸き立ち、「ECBからのクリスマスプレゼント」に盛り上がった。

しかし、冷静に考えてみると、欧州系銀行が、更にスペイン・イタリア国債の保有高を増やすことで財務健全性が問われるは必定。
1%の超低金利ECB融資を何に使おうと勝手であるから、国債購入ではなく、これまでの資金調達の借り換えに向けることもあろう。資産圧縮により貸出を渋ってきたので、この際、本来の企業向け融資に振り向けるかもしれない。それはそれでマクロ経済的に悪い話ではないが、市場は目先の即効性、つまり、欧州ソブリン債の利回り低下を期待している。そこに失望感が芽生えた。
マーケットも昨晩は一転冷めた反応に。
しかも、このECB大盤振る舞いは、欧州債務危機の病巣にメスを入れる療法ではない。あくまで時間稼ぎのための苦肉の策である。liquidity(流動性)不足の緩和には資するが、solvency(債務返済)の問題には根源的解決法とはならない。
なお、このECB特融には民間銀行側にもためらいがあった。日本でも経験済のことであるが「質屋に駆け込むところを目撃される」ことから生じるレピュテ―ション(風評)リスクが無視できないからだ。そこで、大手銀行には、各国中央銀行から、このECB支援策に積極的に応じるように働きかけがあったようだ。これまた、なんとも日本的な匂い。
ジャパナイゼーション(欧米経済の日本化)を彷彿とさせる一幕であった。

さーて、筆者が最も気になる数字=ガーラ湯沢スキー場の積雪量が連休前に遂に150センチ突破!連日、連騰。
実は仕事山積みなのだけど、もはや仕事などしている場合ではない。
雪とカツカレー(福神漬け大盛り)と温泉の世界にドップリ浸るのだ♪
というわけで、仕事関係の皆さま、あしからず(笑)。

ところで、昨晩行った焼肉屋さん。コレド室町の房屋。
和牛一頭買いとかで、いろんな部位の上質の肉をタレではなく塩で食した。これが絶品!
12日連続講演からシンガポール、ガーラと続き、アドレナリン出っぱなしのカラダはがっつり肉食系になるね。自称鮨評論家もあっさり系では物足りない。

一昨日は、ガーラの夜明け、否、ガイアの夜明けのスタッフたちと忘年会。1月3日拡大放送(一時間半)で「ゴールドラッシュの真相」。
制作面で色々お手伝いしてきたのだが(プロデューサー氏に言わせると番組のご意見番 ← 笑)、今は、連日徹夜で編集作業やっているとのこと。世界各地取材で撮った膨大なビデオを80分程度に編集するのが大変な作業。3年前に同番組で中国金鉱山に潜入取材したときには、帰国後、編集室に入ったことがあるが、機械メンテナンス優先で冷蔵庫みたいに冷え切った室内。今は、デジタル化でかなり軽減されたらしいけどね。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/

番組の性格上、金価格の分析とか予測ではないよ。

2011年