豊島逸夫の手帖

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金急落の理由

2011年12月13日

昨日、アジア時間の日中から金市場では売り攻勢が始まった。1700ドルの大台を一気に割り込み、欧米時間に入っても、売りの波は収まらず。ストップ・ロス(損切り売り注文)がストップ・ロスを産むという負の連鎖が続き、結局1660ドル台で引けた。
筆者の相場観については、日経ヴェリタス今週号「相場を読む」に詳しく載っているので参照されたい。先週金曜日時点の取材であったが、その後もスタンスは変わっていない。ただ、下げのタイミングが当初の予測より早く出た感じだ。

昨晩の欧米市場で注目の材料は、格付け各社が、総じて先週のEU首脳会議の結果につき、厳しい判断を示し、欧州ソブリン債格付けのレビュー(つまりは格下げ)を示唆したことであろう。
欧州債務危機悪化は3つのルートを通じて、金に売り材料として働いている。

  1. クレジット・クランチ(信用収縮)- 6カ国協調ドル資金供給作戦にも関らず、欧州の銀行間貸出金利は上昇傾向にある。依然、金よりキャッシュのニーズが強い。換金売りが出やすい。
  2. ドル高 - ユーロが売られ、結局、ドル高となる。
  3. IMF金売却の可能性 - IMFは欧州救済のための資金不足。そこで、てっとり早い策として保有金売却のシナリオがちらつく。

なお、米国マクロ経済指標が、このところ、趨勢的に改善の傾向を示していることも、マネーの流れのドル回帰現象を誘っている。
問題は、金価格の下支え要因となるべき新興国需要。
インドが鈍い。ルピー安により現地通貨建て金価格は割高気味。しかも、13回連続利上げがボディーブローのように効き、経済成長率が7%を割り込んできた。価格効果、所得効果、両面からインドの金需要が頭打ちだ。
対して、中国は好調。先週発表の消費者物価上昇率は4.4%にまで下落したが、中国当局はすかさず預金準備率引き下げに動き、更に、利上げモードから利下げモードへの転換も視野に入る。トップダウンの経済ゆえ、政策対応は早い。軸足を物価安定から成長重視へ切り換えつつある。結果的に、実質金利マイナス状態は変わらず。マネーはモノに流れやすい。
そこで、1600ドル台半ばまで急落したところで、実需買いが出るは必定。しかし、これまでより経済が減速していることはたしか。
そうなると、短期的には、欧州発のリスク回避の金売りが優りそうな様相だ。
先週のECB理事会でドラギ新総裁が、市場が期待した欧州版QE1に消極的姿勢を見せたことも、金市場では失望感を生んだ。
総じて依然、軟調な展開が予想される。

さて、明日からはシンガポール出張に行ってきます。ジム・ロジャーズとの新春対談企画を彼の豪邸で。世界経済全般に話題は及びます。金曜日にシンガポールから帰国後、そのままガーラ湯沢スキー場オープニングにゴー!!笑
仕事も遊びも全開モードで今年は暮れ行く。独立してワークライフバランスは改善されたようだ。
なお、最近、印象に残った言葉。
― 絵は燃える、陶器は割れる、女は逃げる、金は残る
― もてる男、 子供の心に大人の財布
気張ってゆきましょ。

2011年