豊島逸夫の手帖

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相場に入賞、前後賞は無い

2006年2月27日

本稿は週末 新幹線車中で書いている。

土日の2日間 名古屋で3回のセミナー講演。100名で募集したら300名もきたので急遽3回に分けたと主催者の説明。出席者は夫婦連れが目立ち、なごやかななかにも熱さを感じた。やっぱり、名古屋は今、元気である。

さて、オリンピックも終わった。日本は4位入賞数が史上最高とか。でも"入賞"という概念は日本独自と言われ、はたと気がついた。たしかに外国にはない。英語の訳語も見当たらない。メダル取るか取れないかの戦いである。

そう考えると、宝くじの前後賞などという概念も外国ではあまり聞かない。入賞も前後賞もはずれたけど、近かったから残念賞という考えだろう。日本人は、負けた時、"惜しかった。あそこでああしていれば..."と、ねちねち考えがちだし、それに同情も寄せる。

筆者もディーラー時代、負けた日は帰り道、色々うじうじ考えがちであった。そこにくると、同僚のスイス人たちは実にさばさばしている。今日は今日、明日は明日、を地で行っている。中世以来、他民族の侵入が繰り返された土地柄、変化に対する順応性がDNAとして定着しているのだろう。つくづく、こと相場に関しては、スイス人にはかなわんと思ったものだ。けれども、そのスイス人も、長期プロジェクトを転がすことには至って不得手である。ここでは日本人が断然優る。

こんなジョークがある。

アルプスの山をスイス人がタクシーで登った。下り始めて、ブレーキが故障。制御不能になったところで、乗客のスイス人がなんと叫んだか。

"メーターを止めろ!"

まぁ、アルプスをタクシーで登るなどという贅沢をスイス人がするはずもないけどね。これはあくまでジョーク。

もうひとつ、これは、スイス銀行がロンドンに証券支店を開設した頃のハナシ。数百人の行員を擁する組織なのだが、トップ3名はいずれもオランダ人。ディーラーは圧倒的にスイス人優勢なのだが、経営となると、植民地支配により培われた"鳥の目"を持つオランダ人にはからきし敵わないのだ。現地ではオランダスイス銀行などと揶揄されていた。

民族により、得意技も異なるということだろう。

日本人は長期戦略に基づき、じっくり考える分野でチカラを発揮する。これは民族のDNAだろう。だからこそ、日本人が金について考えるときは、得意の長期モードで望むべきだ。デートレーダーなどと意気込んでもスイス人には勝てないよ

純金積立という長期積立型商品が発達したのも日本だけ。日本での成功を見て、色々な国の銀行がマネしたが、全て失敗した。なぜ、日本だけ、未だに50万人ちかくのひとがこの口座を通じて毎日金を買い続けているのか、その理由を海外からよく聞かれる。ミステリーに映るようだ。

2006年