2006年10月4日
600ドル台を維持できず、570ドル台へ急落中である。
原油58ドルへ下落。インフレ懸念後退の安心感に支えられてNY株は史上最高値更新。その結果の金急落である。北朝鮮核実験計画報道という地政学的要因も効かず。
一巡したと思っていたのだが、ヘッジファンドの売り手仕舞いが上記の展開のなかで、再び加速している。"未だ残っていたのか"という感じ。所謂"劇場のシンドローム"の再現である(緊急時の劇場の出口に観客が一斉に殺到するようなマーケットの状況のこと)。
インドの現物買い復活に支えられ600ドル回復してやれやれという矢先のタイミングであった。中国、韓国などアジアは今週の連休中を狙われた感もある。金ETFの伸びも止まっていた。
と、このように綴ってくると、救いのないようなトーンになったが、所詮逃げ遅れたと感じているヘッジファンドのパニック売りである。WGCのアジア中東各地の事務所にヒアリングしても需要は活発。需給ファンダメンタルズは悪くない。ただ、マクロ市場環境の変化(米経済減速)のなかで年金が買い水準を580ドル以下に引き下げていることは感じられる。長期的上昇相場が崩れたというような状況ではない。
今後の展開のポイントは、本欄で再三論じてきた米国経済減速という要因である。
現時点で思うことは、"減速"に留まりインフレ無き経済成長(所謂ゴールディロックス経済)というユートピア的シナリオになれば、株、債券のポートフォリオで充分。金のようなヘッジ資産の出番はない。
他方、"失速"ということになると、住宅バブル崩壊=信用リスクヘッジとしての金に出番が回ってくる。
原油が反騰しインフレ懸念再燃というシナリオも未だ考慮せねばならぬ。昨今の市場のセンチメントは24時間で180度変わるものだから(エコノミストの長期予測が毎月めまぐるしく変わるような時代だ)。
全体的に、バーナンキさんの微妙な舵取りが今まで以上にマーケットを動かすだろう。彼が首尾よく手腕を発揮すれば金は売り。ちょっとでもタイミングを誤てば(ブレーキのかけすぎ、或いはかけ遅れ)、金は買われる。
価格動向については、9月12日付け本欄"600ドル割れ"の価格グラフを改めてご覧いただきたい。金ETF導入以前の旧トレンドラインと導入後の新トレンドラインの中間線を模索中と書いたが、その模索が未だ続いている。
600ドルまで戻してみたが、未だラインの角度は急すぎるとマーケットは判断したようだ。そこで、560-580ドルの水準ではどうか、という模索が再度始まっている。この角度なら、それほど急という感じはしない。充分に巡航速度レベルと思う。あとは、ヘッジファンドの劇場のシンドロームによる余震がどこまで続くかということ。逃げ遅れたと感じているファンドが未だ残っているかもしれない。しかし、余震は余震でありマグニチュードが本震を上回ることはない。