豊島逸夫の手帖

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テポドンが発射されたら?

2006年6月20日

北朝鮮関連の材料は、欧米市場から見れば、所詮、対岸の火事である。我々日本人が中東情勢を見る目と同じで、切迫感に欠ける。出身地の米国人兵士が死亡したわけでもなく、ユダヤ人が入植しているわけでもなく、重要な産油国でもない。同国の核開発を巡って米、欧、露、中の利権が入り乱れているわけでもない。ブッシュが北朝鮮は悪の枢軸として非難しても欧米マーケットは直ちに地政学的リスク増大として反応するわけではない。

とはいえ、今回は米国一般メディアもテポドン関連ニュースを異例の関心を持って報道している。イランの核開発問題で相当神経質になっているのだろう。北朝鮮とイランの間に妙な連帯感でも生まれると(その気配は既に感じられるが)、緊張関係が一層複雑化する。従って、マーケットの中でも今までよりは注目度が高い。

筆者もNYのディーラーやアナリストの友人からしきりに意見を求められる。
北朝鮮関連は、おそらく中長期的にジワジワ効いてくる類の材料になるだろう。極東のバランス オブ パワーの微妙なシフトに影響を及ぼすからだ。北朝鮮と決して事を荒立てたくない中韓と、強硬姿勢辞さずの米、その間で腰が引けている日本外交の構図は、中長期的に同地域における地政学的リスクを高める。その日本に住んでいる日本人にとって、ご近所の暴れん坊のミサイル発射は、"有事"という言葉が現実的に感じられる瞬間となる。

これまで平和ボケとは揶揄されてきた日本人にとって、北朝鮮問題は、有事とか地政学的リスクという言葉を、より切迫感を持って受けとめるきっかけになっているように思う。

テポドンが仮に発射されたとして、そこで東工取に有事の金買いが殺到するとは思えないが、個人のポートフォリオを考えるときに地政学的リスクに対するヘッジということも真剣に検討される市場環境にはなるだろう。

足元の相場は一日の変動幅が10ドル以上の状況が続いているが、落ち着きを取り戻しつつあることは間違いない。投資マネーのリスク回避の動きが加速と言われたが、それで何処へ行くのかという段階になり、リスクの無い資産などありえないということをマーケットは改めて噛み締めている。

2006年