豊島逸夫の手帖

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熱い中国金市場

2006年3月20日

週末は北京で開催された金投資勉強会セミナーで講演。80名の出席者の大半は民間銀行の関連部門のマネージャーたち。年代は30-40歳中心。それに、鉱山、宝飾関連の"トレーダー"も混じる。後者は???と思ったが、彼らも上海金取引所の会員なのだ。

今回の参加者の特徴は、とにかく今までより格段にレベルが高いこと。正直びっくりした。たとえば、HSBC香港の講師が行なったリスクマネジメント全般の講義も、かなり高度であったが、あとの質疑応答では活発な議論が出る。銀行にとっての金業務のリスクの数量化、その際のデータの信頼性、イベントリスク、オペレーションリスクの例などなど。かと思えば、テクニカルの専門家(北京の証券関係者らしい)によるチャートについての詳細な説明もあった。

筆者は金価格全般の講義。そして、日本の市場についての話。皆、金についての基本的な知識は持っているので、話すほうは楽だ。当方は英語で、中国語への逐次訳なので、じれったいのだが、この通訳が専門用語も理解するレベルなので安心だった。

金融機関の参加者は、昨年金業務が解禁されたので、いまや、金業務の行内インフラ作りの渦中に置かれている人達だ。まずは、上海など大都市の母店と呼ばれるメジャーなところから徐々にテスト的に開始して、試行錯誤を繰り返している様子。未だ、銀行本来の業務のインフラも充分とはいえない状況だから、かなり苦労しているようだが、そこは中国流にトップダウンで決行である。あまり細かなコンプライアンスなどは気にしていない。

なお、民間はこのように高速でマーケットに馴染んできているのに対し、"官"の方は未だ遅れている感あり。特に官の上層部は、党出身ゆえ、まず規制ありきの発想が未だ強い。マーケットで売り先行で下がる場合の話しすれば、それなら売りを規制すれば下がらんだろうと一蹴する。但し、官でも30台の若手は別だ。チーフディーラーという肩書きを持つ女性たちは一見OL風の身なりで、マーケットもよく知っている。組織内の上下のギャップが大きい。

講義は時間が足りず、また近々、続編をお願いしたいとうことになって、ステージ上で再来を約束させられた。こっちも意気に感じるほうだから、喜んでとお受けした。皆、目が真剣で、もっと詳しく知りたいという気持ちがヒシヒシ伝わってくる。日中関係とは全く無関係な雰囲気であった。

勉強熱心さ(向上心)と多少のお行儀悪さは容認してしまう風土(これは市場の流動性に必要なエネルギーとなる)を兼ね備えているこの国の金市場は、直ぐに育つなと実感して、慌しく北京をあとにした次第。

2006年