豊島逸夫の手帖

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金市場見通しパート2

2006年12月14日

最近の取材で記者さん達から頻繁に聞かれる質問。"商品サイクルは未だ続くのか?終わったのか?"そしてジム ロジャースの発言などが必ず引用される。

そこで、半年くらい前から、私は以下のイメージ図を示している。

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マーケットの構造に大きな変化が見られない"静的"状況では、従来の商品サイクル(=循環)が繰り返される。急騰、急落を何回か経て、価格水準は振り出しに戻る。しかし、その構造が劇的な変化を見せる"動的"状況になると、急騰、急落を繰り返しつつ、価格水準が徐々に切り上がってゆく。喩えていえば、静的なケースは、満ちては引く潮の流れ、動的なケースは、(マーケットの)景色を変えてしまう津波と言えようか。

金価格の場合で言えば、1980年の史上最高値のケースは、暴騰、暴落を経て結局振り出しに戻ってしまった。対して、今回の上げ相場は時間をかけて急騰、急落を経て水準が切り上がってゆく型である。その結末は、振り出しに戻るのではなく、高止まりだ。マーケットを見ても、中国、インドなどのアジアマネー、中東のオイルマネー、欧米の年金マネーの揃い踏みという今まで見られなかった景色が展開されている。

問題は、高止まりの水準だ。1000ドルという水準は、オーバーシュートの勢いで瞬間タッチとしてはあり得る数字だ。しかし、持続可能なレベルかということになると????である。一方、今年を振り返れば、一年かけて600ドルという水準が需給ファンダメンタルズにより正当化されることが実証されたと言える。結局、この二つの価格により形成されるレンジのどこかが落ち着き先になるのだろう。

まずは700ドルという水準で需給が見合うのか、試される年が2007年と認識している。その過程では、ほぼ3ヶ月サイクルくらいでヘッジファンドがin-and-out 出たり入ったりを繰り返し、短期的乱高下が演出されよう。

個人投資家へのアドバイスとしては、上記の図で言えば、ジクザグの曲線に惑わされず、トレンドの直線を見失わない感覚が重要だ。そのためには、あまり相場に入れ込まないこと。価格動向が気になるのは当然だが、あくまで趣味のひとつ程度として距離を置くことだ。Buy and forget ができるような訓練を積むことが、"貯蓄から投資へ"の過程で皆一番苦労するところなのだ。物忘ればかりとこぼすシニアにかぎって、相場が気になり、忘れられないものだよ。

2006年