2006年4月28日
27日の欧米市場では3つの注目材料が飛び出し、金価格は安値627ドル、高値643ドルの波乱の展開となり、結局、本稿執筆時点(4月28日朝7時)ではスポット634ドルとレンジの中ほどに落ち着いた。
時系列的に振り返ってみよう。
まず、中国が2004年10月以来となる利上げ(5.58%から5.85%へ)。直近のGDP成長率が10.2%という、誰が見てもオーバーヒートを予感させる数字ゆえ、当局もさすがに心配になって引き締めに動いたのだろう。
筆者が、この材料にことのほか注目するのは、中国当局の金融政策運営がいかにも危なっかしいから。計画経済からやっと脱皮した段階で、利上げといっても、常に"遅きに失する"或いは"引き締めすぎる"リスクが伴う。金市場には後者のシナリオはマイナスとなる。
2年前の丁度ゴールデンウイーク直前に、中国首脳の引き締め発言で商品全体からファンドが一斉に引き相場が急落した記憶が、マーケットにはどうしても蘇るのだ。昨晩もこの材料で一旦はかなり売られた。
それをいきなり覆したのが、バーナンキ議会初証言。At some point in future(未来のある時点では)、金融当局としてmay take no action(何もしないこともあり得る)という発言が、利上げ休止を示唆すると理解された(なにやら、グリーンスパンさんのときと同様、英文解釈相場になってきた感じ)。この一言で、FOMC議事録の利上げ打ち止めニュアンスが確認されたとの安心感から、株、債券ともに急騰。ドルは急落。ドル円も一時113円台へ。金は反騰。
最後に出た材料は、銀ETF、遂に(本当にようやく)認可の報道。これについては"ここまで大騒ぎして、もし認可されなかったら、それこそ失望売り"と書いたが、認可されても完璧な織り込み済みで銀は逆に売られた。噂で買って、ニュースで売るという典型的パターンだ。連れて金も反落。
それにしても、金ETF(上場投資信託)の時よりSEC(米国証券取引委員会)も態度が随分軟化したな、というのが筆者の率直な反応。これにより、前回の大河、運河の喩えで言えば、株、債券という主流の大河の近くの人里はなれた"ゴールド湖"に加え、更に奥深くの"シルバー湖"にも運河が開通し、どっと水が流入する可能性が現実のものとなった。その水流の規模がどの程度が、未だ誰も分からない。市場は固唾を呑んで見守っていると言える。でも逆流は考えにくいから、湖の水位は高位安定となろう。
なお、先輩格金ETFの最新残高は454.35トン。引き続き600ドル以上でも数トンずつだが着実に増加傾向である。新規買いが利益確定売りを上回る状況を示す数字だ。現物もインド、中東などは610ドル程度を徐々に受け入れる、或いは受け入れざるを得ない状況にシフトしつつある。インドの5月は婚礼シーズン(May Brideか・・・)、持参金=文字通り持参ゴールドのお国柄ゆえ、高値でも目をつぶって買わねばならぬ事情もあるのだ。インドの花嫁の父も大変だね。