2006年2月3日
金、銀、銅の価格が軒並み急騰したので、今年のオリンピックメダルもこれまでにない高価値になりそうだ。
特に、銀価格の急騰が注目されている。金価格の上昇が一服するや、すかさず銀が買われ、連れて金も上昇を再開する、というスパイラル現象が生じている。お互いが刺激しあっているようだ。
今回の銀急騰劇の主役が、実は金と同じくETFという金融商品なのだ。金ETFの大成功を見て、それでは銀でもETFを組成しようという動きが表面化してきた。金と同様に銀で運用する投資信託が上場されると、証券会社で株を売買する感覚で銀取引ができるようになる。そうなると、これまでにない規模の資金が、そうでなくても小さな銀市場にドット流入する可能性がある。金魚鉢に鯉が入ったようなものだ。
実際、銀市場には、1979-80年にハント兄弟というテキサスの富豪が買占めに動き、価格が9ドルから50ドルまで暴騰、その後、10ドルまで暴落した歴史がある。
あまりに投機的になるので、銀ETF上場に関しては、実需家から心配する声も上がっている。銀の実需の代表的な分野が、写真フィルムなのだが、ご存知のように、デジカメに押され気味である。需要が落ち目なのに、投機的売買で価格が上がる結果になる。
銀ETFは、銀という産業用素材を良く言えば金融商品化し、悪く言えば投機化させるという危惧である。
金は、商品(コモディティー)とマネーの二面性を持つが、銀、銅に関しては商品の面が圧倒的に優る。取引市場のインフラ、厚みも全く異なる。それを同じ土俵で論じることに無理があるのかもしれない。
パラジウムにも同様のでき事があった。先物取引所に上場され、小さな市場に大量の投機的マネーが流入した結果、100ドル以下が当然とされた金属に1090ドルの高値(2001年)がつき、2003年には145ドルまで暴落した(今、また300ドルまで急上昇中である)。そのとき困ったのが歯医者さん。健康保険適用範囲内の歯科用合金のコストが跳ね上がり大騒ぎになったのだ。
オリンピックメダルの価値が上がるのは結構なことだが、フィルムとか、歯科用合金とかは我々の日常生活に身近なものである。
考えてみれば、原油も銅も同様なのだが、過剰流動性の時代になると、おカネを低金利で調達して、天然資源で運用すると儲かるという仕組みが多用される傾向になる(専門用語ではキャリートレードという)。
1月26日付け"金ETF残高 急増"で詳述したことだが、人とおカネの値段は安くなり、天然資源と技術には高い値がつく時代なのだ。