豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 金ETF残高 急増
Page089

金ETF残高 急増

2006年1月26日

1月21日時点で372.49トンだった金ETF残高が、昨日396.53トンに急増した。まとまった機関投資家の買いが入ったのだろう。金価格も反騰。本稿執筆時点(1月26日朝8時)でスポット564ドル。つくづく下がりにくい、下がりたがらない相場だと改めて痛感。

注目は、銀がやはりETF組成のハナシが出て、出遅れ感もあり、9.39ドルと、18年ぶりの高値更新。プラチナも1,056ドルと史上最高値更新。ベースメタルと呼ばれる銅、亜鉛、アルミなども新高値。下がりかけていた金も連れ高となった。

以前にも書いたのだが、中国とかインドとか、とんでもない需要ポテンシャルを持つ大国が台頭してきて、供給サイドはといえば、天然資源ゆえ、そう簡単に生産は増えない。そこで、新たな需給均衡価格はいったい幾らなのか、原油も含めて、市場が模索を始めた段階である。今まで足を踏み入れたことのない海図なき航路であるから、暗中模索の過程で市場は行き過ぎる(=オーバーシュート)。その反省から戻し過ぎることもあろう(=アンダーシュート)。その どさくさにヘッジファンドもからみ、価格変動幅が増幅される。天然資源がよく言えば金融商品化され、悪く言えば投機化しているのだ。

さらに目をマクロ、つまり全体の状況に向ければ、広義の(経営)資源の価値というものが相対的に大きく変わってきている流れを感じる。

要は、労働資源と資本資源が安くなり、天然資源や技術資源には高い値がつく時代なのだ。株主本位の経営は、労働分配率の低下、即ち、会社は儲かっても給料はそれほど上がらないという現象を生む。他方、低金利というのは、世界的に過剰流動性が溢れ資金調達には苦労しないとうことだ。

ヒトとカネの調達コストは安上がりの時代になった。代わって、天然資源や技術資源はますます希少、貴重になる。そのうちに貴金属という範疇にいろいろなベースメタルも入ってくるのではないか、とさえ思われる状況である。天然資源を持つ国の通貨は買われ、ハイテクを誇る会社の株は買われ、発展途上国も天然資源保有を武器に存在感、発言権を高めると言う傾向もますます強まろう。

長期運用の年金基金が、代替投資分野の運用対象に天然資源を入れ始め、金ETFを買い始めたことも、当然と言えば当然かもしれない。

2006年