豊島逸夫の手帖

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米経済はタイタニック?

2006年1月30日

ETF残高がついに400トンを超えた。1月27日時点で413.99トンまで急増。これだけ買われても、相場は依然559ドル(本稿執筆時点1月30日朝8時)。相当、カウンターの売りがあるのだろう。27日のNYでも、一時564ドルまでススッと急伸したので、すわ、と思ったが、直ぐに売られ560ドルを割り込んだ。

とはいえ、振り返ってみれば、よくもここまで上がってきたものよ、とも思う。週末スキーに行ったのだが、いまの状況をヒマラヤ登山に模すれば、こんなところか。500ドルという山の頂上を極めたら、目の前に、地図には無い、800ドル級とおぼしき山がおぼろげに見える。その山の高さは600なのか700なのか、はたまた800なのか。でも、雪山登山に雪崩もつきもの。

週末にかけての欧米経済ニュースのフォーカスは。ダボスで開催された世界経済フォーラムにおける要人発言。

なかでも筆者が注目したのは、ジョージソロス。米経済はタイタニックだと。乗客は安心しきってパーティーに明け暮れている。それに対してCNNのコメンテーターは、大丈夫、航海技術も発達しているから無事、港に戻れるよ、と。

ときあたかも米経済統計は、米経済成長が1.1%と急ブレーキの兆候。米国では中産階級の危機が叫ばれる。雇用統計上では新規雇用が増えているのだが、問題は、新たに仕事が見つかっても、以前のような賃金水準は望めない。

1月26日付の本欄(ETF残高急増)でも述べたことだが、労働者の分け前(労働分配率)が低落傾向なのだ。好況下で株価上昇のためのリストラ(フォードの大規模リストラのニュースで同社株は急伸)。企業業績は上がって、株主配当は増えても、給料は据え置き。なにやら、日本経済の近未来を思わせる状況ではある。

外為市場ではドル反騰モード。ドル円は117円台へ逆戻り。ドル利上げ打ち止め観測が一転、利上げ継続観測へ。といっても、3月のバーナンキ初登場のFOMCで0.25%追加利上げに踏み切るという程度の観測なので、市場としては織り込み済み。それを改めて市場が囃し、米GDP減速というドル売り材料は無視するのは、とりあえず113円を越えてはドル売り円買いも突っ込めないと見た市場が、ドルを買いたがっているということ。双子の赤字というドル売り定番商品はひとまず棚上げだが、また、時を見て、ショーケースに陳列となろう。

2006年