豊島逸夫の手帖

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経済指標に揺れる相場

2006年3月15日

昨晩(3月14日)は、二つの米経済指標と一つのレポートが同じ方向性=ドル売り、ドル金利頭打ちを示唆する結果となり、金は550ドル台を回復。本稿執筆時点3月15日朝7時でスポット551ドルである。

まず、米小売統計が半年振りの下落。事前の予想マイナス0.8%のところマイナス1.3%。

昨年第四四半期の米経常収支は、予想2177億ドルのところ、2249億ドル。年間で8000億ドルの大台突破。

更に、民間調査機関が米利上げサイクルもあと1-2回で終了かと予想という報道。利上げ打ち止め観測再浮上。

米長期金利はすかさず4.7%の大台割れ。

まぁ、こう書いている方でも、毎日のように経済データに一喜一憂するマーケットを見ていると、やや食傷気味になるから、読者の方々も一体(方向性は)どっちなんだ、と言いたくなろう。それに対する専門家流の答えは、"マーケットは方向性に欠け、不透明"という便利な表現だ。ええ加減にせんかい、という声が聞こえてきそう。

日々の変動だけに目を奪われるという"木を見て森を見ず"の愚に陥らないようにするために、全体の流れをおさらいしてみよう。

先週前半までは、イラン情勢などを背景に550-570ドルのレンジ相場が続いていた。それが、下へブレイクしたのが量的緩和解除発表前夜の欧米市場。540ドル台へ下落し、更に、米雇用指標の追い討ちで金曜NY時間帯では534ドルまで急落。その後現物需要などで540ドルを回復後、昨晩550ドルへ反騰。

最近の特徴なのだが、下げはすかさず買われる。世界中の金投資家が下がったら買うと言っているときは下がらないもの、と以前書いたが、まさに手ぐすね引いて待っていることが確認された感じだ。下げの時間帯が持続しない。NYで下げても東京時間には元に戻っている。

要は金利上昇という金売り材料と、双子の赤字という構造要因=買い材料との綱引き状態に、イランなどの地政学的リスクが時折絡むという展開なのだ。目先はそれでも未だアタマ重く軟調を脱しきれないが、長期の上昇トレンドは不変。

一昨日書いた下記のポイントを再度引用して今日は終わる。

バーナンキの手腕が問われる。特に、グリーンスパンが残した負の資産といわれる米国経済の赤字体質という構造的問題には、未だ手付かずである。経済のフローを見れば確かに順調に廻っているが、ストック面を見れば、膨大な赤字が蓄積しているわけだ。その赤字解消のためにはインフレ政策かデフレ政策が必要となる。そうなると金は買いとなる。やはり長期的には金の上昇トレンドに変りはない。

2006年