2006年6月2日
13ドル下げて 本稿執筆時点(6月2日朝6時)629ドル。
続落している要因として挙げられているのは、
― FOMC議事録を利上げ継続と読んでのドル買い=金売り。例の"双子の赤字"という構造要因を重視してのドル売りから、金利差要因が蒸し返されドル高となっている。ドル高に対して金市場が改めて売りの反応をするようになったことは、マーケットが売りたがっている=調整色が濃くなっていると言えよう。(ドル高も無視して買われた1ヶ月前とは様変わりである。)
― ライス国務長官のイラン問題に関する歩み寄りともとれる発言=地政学的リスク後退との解釈。米国も交渉のテーブルにつく用意ありと述べたことだが、その真意は、これで米国は外交交渉に応じないという批判を封じたこと。イランが証明できるカタチで核開発を放棄すれば、との条件をつけたことで、"あんた次第だぜ"と言わんばかりにボールをイランへ投げ返したわけだ。ブッシュサイドが軍事力行使を含む全ての選択肢を堅持する姿勢は全く変わっていない。これでイランの核開発継続か否かという問題のフォーカスがより鮮明になった(sharpen the focus)わけで、冷静に見れば地政学的リスクは高まったと筆者は感じている。
― 経済統計でインフレ懸念後退を示唆する数字が出たこと。これは数多くの経済統計が毎日のように発表され、そのひとつひとつについて解釈が異なり、マーケットの反応も猫の目のように変わるのが実態だ。金市場は今の段階では売りの要因を求めているとしか言いようがないね。
― 実需が未だ戻っていない。これは言える。価格変動幅が大きく、個人投資家もビビッている。無理もないと思うね。そんななかでも この下げ過程で冷静に買い増している連中がいる。ETFの残高が700ドル近辺では440トンを割り込んでいたのが、昨日現在447トンまで増加してきたのだ。オーバーシュートしたところは冷静に利食い、ヘッジファンドなどが売ったところはしっかり拾っている集団。長期保有前提の買いのお手本みたいな米年金の動きである。
以上を纏めると、足元でマーケットのモメンタム(勢い)は売り優勢である。ポイントはどの価格水準でアジア中東の現物買いが本格的に復活するかにかかっていると思う。需給バランスというファンダメンタルズの裏づけのない上げ相場は持続性に欠けるということを この一ヶ月の動きは改めて実証したとも言える。
インド、中東の現地の動きを見るに、これまで、ぼちぼち動意が見られるとの感じだった。昨晩の下げで、"ぼちぼち"から"かなり"に移行すると見ている。
PS
本コラムのアクセスも最近飛躍的に増え、原稿ひとつに7000件を超える数字が出ることもあります。セミナーでも、毎日読んでるよ、と声掛けられると励まされるものですね。私の方でも、朝一エクササイズの片手間に書き始めたものが、いまや朝起きてウォーキングしてからブログみたいに書くというプロセスがすっかり定着してしまいました。この一年、酒をやめて二日酔いがなくなったことも大きいなと感じています(笑)。