2006年2月13日
前回の更新直後から再び急落。金曜日の日本時間帯に10ドルほどの下げを演じた。結局550ドルに逆戻り。一日の変動幅が大きい。真空地帯で値だけ飛ばすような仕手っぽい地合いである。こういうときはあまり真面目に考えないほうがいい。ほっとけば、そのうち落ち着くさ、と構えるに限る。
今回の原稿は札幌で書いているのだが、地元のテレビで雪崩の説明をしていた。先週、乳頭温泉で起きたタイプは"表層雪崩"で、新雪が異常に積もり浅く崩れる。スピードは時速100キロ近い。それに対し、春先に起こるのが"全層雪崩"。雪解けで深くえぐるように崩壊する。時速30キロ程度で遅い。
今回の下げは表層雪崩である。投機的な買いという新雪が積もり過ぎて崩れた現象だ。未だ、雪面に新雪は残っている。だから、日中の相場変動幅も大きい。それでも、金の世界の"大御所"(笑)として感じることだが、1980年の史上最高値のときの荒れ方はこんなもんではなかったよ。600ドル前後に達した頃は、スプレッドだけで10ドル。600(買い)-610(売り)という感じ。そこで、610がtakenつまり買われると、次の瞬間は620とか630でgivenつまり価格水準が跳ね上がる。ディーラーとして瞬間的判断の誤りが1オンス50ドル近くのロスとなる。日中の変動幅も100ドル以上の日が何日かあった。そういう修羅場を経験した立場から見ると、この程度で大騒ぎするようでは未だ甘い。素人のデートレーダーを自称する人達は、悪いこと言わないから今の内にゲームオーバー。リセットしたほうがいい。
それはそれとして、ここで筆者が強調したいことは、1980年の史上最高値というのは、そのような異常な市場環境下で示現した瞬間タッチの価格なので、果たしてベンチマークとして妥当なのかという疑問である。そう考えると500ドル以上の海域は、以前にも使った表現だが、"海図無き"実質的に"未知の海域"なのだ。それゆえ新たな需給均衡価格という居心地の良い、長居できるレベルを捜し当てるまでには何年かかかるだろう。その間に、マーケットがオーバーシュートして思わぬ高値を示現することもあると思う。市場最高値更新とかなんとか大騒ぎになるのだろうが、肝心なことはその後で価格水準がどこで落ち着くかということ。現状では、それが400ドル台では安すぎると思えるので、それでは500ドル台ではどうかとマーケットが試している段階であろう。
さて、札幌では、HBC北海道放送で週一トークしている松永さんという看板アナとスタジオ収録。同じ団塊の世代同志で傷なめ合いながらのおしゃべりである。翌日のセミナーでは、これまでにない濃い反応、質疑応答。売る人、買う人、初心者、中級者、上級者様々で金市場の裾野の広がりを北の大地で改めて思い知った次第。