豊島逸夫の手帖

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555ドル、25年ぶりの高値更新

2006年1月16日

先週金曜日のNY市場は、1981年1月(612ドルまでつけた)以来の高値558.80ドルを記録。本稿執筆時点(1月16日朝7時)で、スポットは555ドル。"25年ぶり高値更新"が毎週繰り返されると、陳腐化してくる感覚が怖いが。ここは冷静に見てゆこう。

直近の要因は、
1. 中央銀行の金準備増強説 - 未だ"噂"の段階だが、彼らの金準備"売却"が90年代に金価格を250ドルまで押し下げた要因だったので、姿勢の180度転換ということが重要。90年代は金売却の噂が噂を呼んだ。今は、金購入の噂が噂を呼ぶ。
2. ドル利上げ打ち止め、ドル安 - 市場ではインフレ懸念も囁かれるが、インフレ懸念と利上げ打ち止め観測は両立しない。原油高が消費者物価上昇(特にコアの部分)には波及しないという見通しが、これ以上の利上げ不要、或いは、利上げ継続は米経済を冷やす(オーバーキル)との観測を呼んでいるわけだ。金市場にとっては、利上げ打ち止め、インフレどちらに転んでも上昇というwin-winの"おいしい"状況である。買いの後講釈には困らない。とはいえ、長期的に見れば機を得た利上げ打ち止めの結果、米経済がインフレなき成長を実現させれば(ソフトランディング)、金にとってはloseの状況になりうる。だからこそ、バーナンキ一年目の力試し期間の成績に注目。目先は今週水曜日発表の米消費者物価上昇率が重要。
外為市場では、金利差要因から経済構造要因にテーマがはっきり移行した。米財政赤字は4000億ドル、経常赤字は7000億ドルという大台を突破しそう。カトリーナ復興が始まった時点からわかっていたことなのに、市場は今さらのように材料視する。数ヵ月後には、また、金利差要因を囃し始めるのかもしれないけどね。金価格と異なり、ドル相場には決め手がないから、ドル安、ドル高、どちらに転んでも持続性に欠ける。
3. イラン核研究再開問題 - 陳腐化したイラクに代わり新たな地政学的要因として確立された感あり。米、英、独、仏、露、中、そしてイスラエルのそれぞれの利害が交錯している国だから、事態は長引く。昨年、イランの各施設近くで黒煙、という外電だけで、すわ攻撃かと色めきたった市場ゆえ、(お騒がせ発言の続く)イラン新大統領の一言などで大きく揺れそう。

以上、まとめてみたが、正直、筆者は戸惑っている。1ヶ月前(12月8日)に書いた2006年展望でまとめた要因のシナリオどおりの展開なのだが、そのスピードが想定より遥かに速いのだ。そのシナリオを市場が織り込みつつあるわけで、次の展開を読むには、更にまた想像力を逞しくせねばならぬ。いま少し考える時間を下さい。(球技で云えば、タイム!!)

2006年