豊島逸夫の手帖

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ゼロ金利解除の影響

2006年7月7日

このトピックも質問が多くなったので纏めてみよう。

まず、従来のセオリーから言えば、金利を産まない金にとって金利機能が正常に動き始めるということはマイナスである。

しかし、今回は そうはならないと考える。

その理由の第一は、ゼロ金利解除の背景が、そもそもデフレモードからインフレモードへのマクロ景気循環にあること。インフレヘッジに起因する金買いのほうが、利上げを嫌う金売りを上回ると考える。

第二は、円金利上昇だけを捉えれば(他の経済条件が不変とすれば)、円買いドル売り要因になること。ここでは、ドル安ヘッジ=ドルの代替通貨としての金買いが、金利を生まないという理由の金売りを上回ると考える。(直近の外為市場では、地政学的リスクに起因する有事のドル買いとなっているが。過剰流動性の時代なので、有事で金、ドルどちらかではなく、両方買うということか...)

なお、アナリスト的に見れば、ゼロ金利解除が景気回復の腰を折る懸念、ひいては日本経済が世界経済の足を引っ張るという懸念も考えられる。欧米では、せっかく日本経済立ち直ったのだから、頼むぜ、早まって余計なことしてくれるなよ、という論調が多い。そこまで考慮すれば、負の所得効果による金需要後退というシナリオも否定できない。しかし、マーケットは以上の諸々の売り要因、買い要因を天秤にかけて、買いが上回ると見るだろう。

さて、足元では、地政学的リスク要因がジワジワ効いている。本稿執筆時点(7月7日朝7時)で633ドル。金ETFも474トンまで増加中。

今回に限っては、有事に対するマーケットの反応も比較的冷静だ。買いが殺到するわけでもなく、テポドン発射を見込んで買い上げた投機筋がニュースで一斉に利益確定の売りに廻るわけでもない。ただ、ミサイルの発射本数が多く、更なる発射の可能性も強いので、米国では北朝鮮ミサイル基地限定空爆すべしとの強硬論も目立つ。今朝のCNBC見ていたら、外交交渉など無駄だとか、いやソウルが報復爆撃されるとか、日本のメディアに比べ遥かに過激な発言が飛び交っていた。総体的に、まさかと思ってタカくくっていたので、マーケットも虚を突かれたという意味で、サプライズ感はあった。ゆえに、パニック性はないが、じわじわ買いが入っているわけだ。

今夜は注目の米雇用統計発表。

直前になって予想値が15万人増から25万人増に大幅に引き上げられたりして、相変わらず振れの大きい統計だ。だから、筆者は、あまりまともに見ないようにしている。短期的には、米経済過熱懸念=インフレ懸念=利上げ継続観測強まる、というマーケットの解釈になるのだろうか。金にとっては、売り買いどっちの講釈にも利用できる解釈だ。

2006年