豊島逸夫の手帖

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機関投資家の金市場参入

2006年11月8日

今週はWGCのNYのETF担当役員と一緒に行動しているのだが、彼と話していると、つくづく金市場の裾野の広がりを感じる。元々は、モルガンスタンレーの株式部門に居た人間で、当社にリクルートされるまでは、およそ金などというものは考えたこともなかったし、勿論触ったことなど全くなかった。ゴールドというものは私のレーダースクリーン上には存在しなかった、と振り返る。それが縁あって金の世界に入り、金ETFを開発し、SEC (証券取引委員会)と2年間やりあってやっとの思いで認可までこぎつけた。その過程では、金に対する数々の偏見に遭遇することになる。

当社のCEOジェームスバートンだって、カルパースという全米最大の年金基金のCEOを9年間勤めていた当時は、金とは無縁の世界に居たわけだ。こういう金の世界には全くの素人といっていい人たちが入ってきてマーケットの景色は大きく変りつつある。

筆者の日常の行動を見ても、六本木ヒルズとか神谷町の城山ヒルズ、或いは兜町などに出没する日々が続いている。日本経済新聞本紙の報道を見ていても、東京とロンドンのETF相互上場いう観測記事が一面に出たりしている。

これまでは個人投資家=リテール部門が主であったが、機関投資家部門へ市場の裾野が拡がりつつある、その最先端に身を置いている感覚がある。セミナーひとつとっても、地方で年配の個人投資家相手に分かりやすく金を語り、その翌日は、大手町にて金融市場の言葉で金を語るという塩梅である。(実は、前者のほうが遥かに難しい。専門用語をそのまま使えるほうが楽なのだ)。でも、機関投資家集団に向けてのセミナー後に、そっと"個人的に金買いたいのだが..."という相談を受けることもしばしば。自分のカネなら決断は早いということか。

さて、足元の相場は、引き続き堅調。米国中間選挙も、どちらかと言えばだが、ドル安金買いの材料に働いている感じ。ETF残高も直近で20トン近く急増し、担当者も目を丸くしていた。特に利益確定の売り戻しがさほど出てこないことに、彼ら自身も驚いているようだ。米国人投資家がこれほどの長期保有傾向を見せるというのは、筆者にとっても意外。

裾野が拡がると色々なタイプの投資家が参入してくることを象徴するかのような現象だ。

明日は日経プラスワンセミナー名古屋篇である。

2006年