豊島逸夫の手帖

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原油70ドル、中国GDP10%、金615ドル

2006年4月18日

週明けの国際金価格は、東京時間で早くも600ドル台を再度突破した後、イースター休暇明けNYでも一本調子の上げで610ドルもあっさり突破。本稿執筆時点(4月18日朝7時)でスポット615ドルをつけている。

500ドル台から上放れることで、成層圏脱出、引力から解き放たれた感あり。高度が高いのか低いのか計ろうにも妥当なベンチマークが見当たらない。海図なき航海である。

中国GDPが依然10%成長に象徴されるように、需給構造が歴史的変化の真っ只中にあるとき、新たな長期需給均衡水準を探り当てるまで、マーケットは未知の領域を歩むことになる。均衡点に落ち着くまで未だ最低1-2年はかかりそう。その間、オーバーシュートは避けられない。

原油70ドル、中国GDP10%、そしてイランは一線を越えてしまった。濃縮イラン製造発表である。

以前、本欄で価格が下がるとすれば材料は何かということで、利上げ、そして中国経済減速のシナリオを挙げたことがある。その両方が崩れた。利上げ継続でもお構いなし。中国経済は全人代の減速方針にも関わらず引き続き高速運行。

昨年来、ドル高でも金は下がらない。

従来の定説が目の前でここまで崩されると、長年ショート(売り持ち)に慣れたディーラーでも、とにかく"怖くて売れない"というのが本音である。

売りが出にくい地合いのなかで、年金買いは粛々と続いている。昨晩のNYの上げ方を見ていても、ほぼ50セント刻みで二歩前進、一歩後退を繰り返しつつ、徐々に踏みしめるように水準が切り上がってゆく展開であった。いかにも腰を据えて、多くはない売り物を丁寧に拾ってじっくり買い上げているなぁという感じなのだ。真空地帯を2-3ドル刻みで荒っぽく乱高下するというパターンではないところが"腰が据わっている"のだよ。

NY株式市場では決算発表を控えているところに、原油高が企業業績に対し暗雲となって漂っている。ドル長期金利もじり高、5%の大台突破となると、株から債券へのシフトもままならない。そこで拡がった年金基金による株安ヘッジとしての代替投資なのだが、その新顔としての金ETF購入は未だ始まったばかり。機関投資家の感覚では、株の割高感に比べれば、金600ドルは未だ割高とは言えないようだ。

2006年