2006年2月23日
2005年第4四半期(10-12月)の世界金需要報告がWGC・GFMSにより発表された。
この第4四半期の特徴としては、インド、中東の現物需要が価格上昇の影響で急減する一方で、欧米の機関投資家金需要が急増したことだ。
まず、注目地域の通年の需要推移を抜粋してみる。
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2004年 |
2005年 |
上昇率 |
インド |
617.7トン |
723.7トン |
17% |
中国 |
233.9 |
253.1 |
8% |
中東 |
360.6 |
393.5 |
9% |
通年でみると、このように、価格急騰にもかかわらず、実需が堅調である。しかし、四半期ごとの数字で見るとこうなる。
(トン) |
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1-3月 |
4-6月 |
7-9月 |
10-12月 |
インド |
210.2 |
272.8 |
143.3 |
97.7 |
中国 |
66.9 |
57.1 |
60.9 |
68.2 |
中東 |
106.9 |
112.9 |
96.5 |
77.2 |
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年前半はインド、中東ともに絶好調であったが、年後半、特に第4四半期に至り、明らかに息切れしてきたことが窺える。さすがに、500ドルともなると、買いの勢いも鈍ったわけだ。本欄でも指摘してきたように、今年に入ってもこの傾向は続いている。ただし、現状では500ドルは買いゾーンになってきている。550ドルまで来ると、520-530ドルを下回れば心理的割安感が出るのだ。
なお、注目は中国。通年で安定している。ここは、物価効果より所得効果が上回るようだ。つまり、金価格高騰による買い控えより、年率10%強の経済成長による女性の可処分所得増による買い増しのほうがネットで上回るということだ。絶対量も未だインドの三分の一ほどなので、成長余地は大きい。今年から規制緩和により、いよいよ投資需要が本格的に花開く段階でもある。
さて、インド、中東の需要減を補って余りある効果を産んだセクターが欧米の機関投資家部門である。
同レポートによれば、第4四半期のETF経由金需要は79トン。さらに、他の機関投資家需要として200トン前後という数字が推定されている。これらの投資需要は、既存の金投資商品からの乗り換え(cannibalization=共食い)ではない、新規需要であること。さらに、長期保有志向であることが付記されている。
まぁ、これまで、本欄で論じてきたことが統計数字により裏付けられたということだね。
足元ではスポット555ドル(本稿執筆時点2月23日朝9時)。筆者も含めて、市場の大半が調整入り観測で一致したところで、市場は反転した。皆が同じ方向に向くと、マーケットは逆に動くという経験則がそのまま出た感じだ。とにかく、下がらない相場だ。このしぶとさには、筆者も半ばあきれたよ。これで調整局面終わりでは何とも欲求不満が残る。ETFの伸びもここにきて短期的には明らかに止まっているのだが。投機筋も商品からの撤退宣言相次ぐなかなのだが。まぁ、結局、皆、考えることは同じ。"下がったら買おう"。東京でもNYでもロンドンでも上海でもムンバイでもドバイでも、投資家の気持ちはそう変わりない。こういうときは下がらないのだな、やはり。