豊島逸夫の手帖

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ワールドカップ終わって

2006年7月11日

伊、仏、独、葡の欧州4ヶ国がベスト4に残るという象徴的な結果であった。象徴的と言ったのは、時あたかもユーロが対円で過去最高水準で高止まりして、対ドルでも強いから。外為とサッカーの世界ではBRICsより米国よりオールドヨーロッパが健在である。

しかし、伊、仏、独、葡の4ヶ国に、もう一つ共通項がある。それは、マストリヒト協定で決められている"参加各国の財政赤字はGDPの3%以下"という条件を満たせない、つまり協定を破っているということだ。独のメルケル女史は、消費税引き上げでその条件を何とかクリアしようと必死なのだが。更に4ヶ国の失業率も相変わらず二桁或いはそれに近い。ジダンの頭突きも仏若年失業者の苛立ちの代弁かな。

いずれにせよ、ベスト4の台所はお世辞にも褒められたものではない。その中でも特に問題を抱える伊が優勝したのも皮肉だが...。

それでも、ユーロが高いのは、ドル金利はどう見ても利上げ最終局面なのに対し、EUは来月にもECBが(ユーロ金利を0.25%引き上げ)3%へ利上げが予想されるなど、更なる利上げ継続観測が強いからだ。所謂金利差要因である。構造要因を見ても、欧州経済も褒められたものではないが、米国の双子の赤字のほうが、グローバル経済にとってはもっと心配ということでドル安、ユーロ高となりがちだ。外為相場というのは二国間経済の相対的評価なのだ。

さて、こういう事情が金とどういう関係があるのかといえば、ドルもユーロもそれぞれにアキレス腱の傷をかかえてプレーしているということ。やっぱり不安だから、アキレス腱とは無縁のゴールドを通貨分散の対象に加えようということになるのだ。

ワールドカップそのものがゴールドでできていることも納得できるでしょう。金は、参加各国共通の価値の標準なのだよ。

2006年