豊島逸夫の手帖

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極東時間帯で590ドル越え

2006年4月6日

本稿執筆時点(4月6日午後4時)、スポット593ドルまで上昇中。今晩の米雇用統計を控えて金融市場全般に様子見気分が強いなかで、金価格はとにかく600ドルの数字を現実に見たいというマーケットの気持ちが伝わってくる。

さて、人民元が昨年7月の切り上げ以来始めて対ドル8.00元台まで上昇した。人民元切り上げピッチが遅く、その間、対中貿易赤字は更に膨張し、米国サイドからは苛立ちの声が強まる中、2週間後には米中首脳会談が開催されるというタイミングである。あきらかにミエミエの中国側の懐柔策か。

欧米メディアでは米中貿易戦争とか保護主義台頭が懸念され、中国が日本を抜き外貨保有世界一となるなかでは、人民元が更に切り上がり、1ドル=7元台へ突入するのも時間の問題と思われる。それで、人民元が切り上がれば、米国の双子の赤字の片方である経常収支の赤字も減るかといえば、中国以外の国からの輸入に振り替わるだけで、抜本的解決にはならないとの議論も根強い。

当然、金市場への影響も注目されるわけで、最近のセミナーの質疑応答でも頻繁に取り上げられるトピックとなった。

まずマクロ経済的効果を考えると、円高に置き換えればお分かりと思うが、中国の輸出減=経済成長を減速させる。中国経済がハードランディングの懸念が顕在化すれば、金を含め商品全体には売り材料となる。但し、これは、あくまで切り上げピッチが加速した場合のハナシだ。現状のペースなら、影響は限定的だ。

次に、ミクロ効果を見れば、人民元高=中国国内金価格下落の影響を考える必要がある。高値警戒感で買い控えの目立つ実需が戻るひとつのきっかけにはなり得る。自由化の進展する民間金売買を刺激し、国内市場流動性の増加にも繋がろう。但し、これも、切り上げピッチが早まった場合であるが。その意味で、今後、中国当局が、政治的外交的観点からどの程度のペースで人民元切り上げを容認するかが注目されるのだ。

2006年