豊島逸夫の手帖

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膨張するチャイナマネーの影響

2006年4月5日

中国がついに日本を抜いて外貨準備高世界一になった。昨年から、2006年中には1兆ドルの大台に乗せると言われていたから、予想通りの展開なのだが、やはり事実となると重い。

その運用に関連して、しきりにマーケットで取り沙汰されるのが、ドル離れ、多通貨分散運用の傾向だ。まずは、ユーロへの分散。偶然だが、昨日ユーロは対円で144円台の新高値をつけた。今回のユーロ高の直接的理由はユーロ金利高予測にあるが、背景には、ドル離れしたマネーの次の宿としての評価が見逃せない。更に偶然だが、あのユーロという地域通貨構想の提唱者としての評価によりノーベル経済学賞を受賞したコロンビア大学マンデル教授の金価格600ドル予想がほぼ的中しつつあるという廻りあわせ。

ご存知ない方の為に補足しておくと、同教授は6年前、金価格200ドル説が流れる超弱気時代に「10年以内に600ドル」を打ち出したのだ。彼の説の根拠は、21世紀にドル単独支配構造は続かず、ユーロなどの地域通貨が群雄割拠する時代になるという最適通貨圏構想。そこで、中国、ロシア、中東などは、ナショナリズムの匂いのする特定国の通貨の傘下に入るのを嫌い、無国籍通貨=金を選択するだろうという考えだった。マンデル教授の最適通貨圏構想は、筆者の大学時代から国際経済学の教科書の必須項目になっていたほどで、怪しげな評論家のゴルゴ13読みすぎみたいなシナリオとは訳が違う。

同教授の指摘どおり、ドル離れ傾向が顕著になり、ユーロと金が時を同じくして新高値をつけるに至った。その背景には、中国、ロシア、中東のユーロへの分散投資、更にその延長線上にしきりに噂される金の存在がある。

未だ、噂の段階なのだが、仮に中国、ロシア、中東のどこかの国が公的金保有の積み増しを実際に発表したら、金のマーケットには(高値圏から更に買い上がるための)決定的一打となるだろう。中国が世界一の外貨準備国となった日に、金価格が600ドル急接近というのもできすぎたハナシだが、中国の金準備増強は、いかにもあり得るハナシでもあり、状況証拠だけで見ればかなり"におう"のだが...。

2006年