豊島逸夫の手帖

Page168 株安の影響は パート2

2006年6月16日

株も下がり金も下がり、しきりに発せられる質問が"株と金の代替関係は崩れたのか"というテーマだ。

昨年はドルと金の逆相関が崩れたと騒がれたが、結局、それは一時的現象で、長期的な逆相関は変わらないという見方に戻りつつある。

株と金についても同じことが言えそう。

一般論については 既に5月31日付け"株安の影響は"で纏めたとおりだ。そこで、金価格と株価の関連については"若干の負の相関"と書いた。

相関関係を計る場合に、相関係数が使われる。株価が10%下落して金価格が10%上昇すれば相関係数はマイナス1.0。株価10%下落、金価格も10%下落となれば相関係数はプラス1.0。従って若干の負の相関という意味は、マイナス0.1-0.2ぐらいというほどのことである。

通常過去10年くらいのデータを元に算出されるので、あくまで長期的トレンドのハナシだ。つまり、株と金は長期的に見れば逆に動く確率のほうが、同方向に動く確率をやや上回るよということになる。それでも、ポートフォリオ理論のなかでは分散効果ありとされる。株と金は逆相関というより相関係数が0.0に近いので独立と言ったほうがいいかもしれない。

直近は同方向に動く場合が目立つから、短期的売買を目的とする投機家にとっては株と金の代替関係は崩れたということになる。

でも、これをもって、今後、株式市場で、例えば金価格急騰という材料に対する反応が、"それを好感して株価も上昇"ということになると思う?"商品価格急騰によるインフレ懸念を嫌気して株価下落"というパターンが逆転するとは到底思えないのだが。金市場から見ても、株価急騰を好感して金価格上昇という展開が定着するとも思えないし。直近の特徴は、ヘッジファンドなどが株損を金売りの益出しで補填するというようなオペレーションが見られることだろう。どう見ても決算を控えたポジション調整という一過性の現象である。

ドルと金の関係にしろ、ドルと株の関係にしろ、従来の常識が崩れたように錯覚しやすいのには理由がある。

価格形成のプロセスが以前より遥かに複雑になっているからだ。金価格上昇要因にしても 少なくも7つの構造要因(※)が日替わりメニューのように入れ替わり出たり入ったりして、持続性のある上昇トレンドを形成してきたわけだから。ドルとか株以外にも様々な要因がひしめくなかでは、相対的にそのインパクトが弱まるように感じるのは当然であろう。

別に金に限らず、今のマーケットは常に複眼で見なければ読めない。かっこよく言えば、変数がxだけの方程式ではなく、x、y、z複数ある連立方程式。変数間の関係も一次方程式linearではなく、二次方程式non-linearなのだよ。
自己責任の時代でリスクに立ち向かうということは、若い人にとっては頭の体操になるし、年配の人たちにとってはボケ防止になる。そう考えてpositive thinking 前向きの発想でゆきましょう。

足元の相場のほうは、金ETF残高が今週に入り451トンー455トンそして昨日は458トンと徐々に増加基調で最大残高更新。NY先物買い残高は300トンを割り込み298トンと軽くなってきた。580ドルまで戻し、予想通りの展開だね。


金価格が上がっている7つの理由。

1.原油高とインフレ懸念
70年代に二度のオイルショックを経たインフレ基調で金価格は高騰。史上最高値を記録しました。その連想から、原油など天然資源価格が上昇するいま、インフレヘッジとして金が注目されています。

2.有事の金
いまだ不透明なイラク情勢に加え、新たにイランの核保有問題、そしてパレスチナ問題が深刻化。中東地域における地政学的リスク(火種)がますます高まり「有事の金」人気が加速しています。

3.ドルからユーロ、金へ
米国の「双子の赤字」という構造問題への懸念から、世界的に投資マネーのドル離れが進行中です。まずユーロへの分散シフトを経て、現在では日本株、そして金への運用が拡大しています。

4.アジアと中東のマネー
中国とインドは歴史的にも文化的にも金選好度が高いことで知られています。また原油高で潤った中東のオイルマネーも金へのシフトを開始。世界的に金需要の伸びが見込まれています。

5.中央銀行の金購入
90年代は欧州中央銀行の金売却が金価格を押し下げました。しかし現在では、対外準備資産として金が再評価され、ロシア、中国などの国々で金購入の可能性が指摘されています。

6.信用リスクの増大と金
日本ではライブドア事件が「紙の資産」の信用リスクを顕在化させました。米国ではGMの経営不安や住宅バブル崩壊が危惧されています。「実物資産」である金への回帰が起きています。

7.年金基金の参入
金の現物に投資するETF(上場投資信託)が開発され、長期運用を旨とする欧米の年金基金などが積極的に金購入に動いています。運用資産のリスクヘッジとして金が選択されているのです。
 

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