豊島逸夫の手帖

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米長期金利急騰

2006年3月7日

米国10年物国債の利回りが4.7%を超えた。長いこと4.5%を挟む狭いレンジで推移してきたので、"急騰"という表現が使われる。

これまでFFレートが段階的に引き上げられるなかで、音なしの構えであった長期金利にやっと動意が見え始めたことは注目に値する。

理屈から言えば、長期金利が上がるということは投資家が長期的にインフレを心配し始めた兆候と理解される。将来物価が上がるのであれば、それなりの利回りが期待できる商品でなければ投資家も長期債券を買う意欲は湧かない。

それに対し、マーケットの反応は、いよいよ長期金利も上げか、というもので、株式市場では金利敏感株から売られる。金も"金利敏感"である。

従って、長期のインフレ懸念台頭という、一見、金にとって追い風と解される材料でも、まずは、金利を産まない金にとってマイナスとなるのだ。

金はオーバーナイトで10ドルほど急落。本稿執筆時点で555ドル(スポット)。550-570ドルのボックスレンジの域を出ない。この変動幅の中では、何ドルをつけても不思議ではない。真空地帯を浮遊する相場である。

2006年