豊島逸夫の手帖

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新高値更新へ向けて助走開始

2006年8月10日

ご無沙汰でした。

この2週間、まともに相場を見ることもなく、自分の頭の中のハードディスクのDELキーを押し、容量一杯に詰った情報を全て削除してみた。これ、ディーラーの時代から、夏休みになると筆者がよくやる習慣なのだ。普段はどうしても"木を見て森を見ず"になりがちゆえの、自己調整期間である。新鮮な観点にも気づいたりする。

その結果、自分なりに確信を得たことは、年末に向けて新高値更新に動くであろうということ。どう見ても、今回の長期上昇トレンドは、730ドルなどというなんとも中途半端な数字で終わる程度の相場ではない。

その理由といっても、それほど難しいハナシではない。ちょっと引いて見れば 当たり前のストーリーなのだ。

金という稀少資源の新規開発は容易ではない。それに、中国人、インド人、アラブの人たち、そして欧米の年金理事さんたちが群がっている。その人だかりを見て、中に分け入り、けしかけて一儲けを目論むファンドのお兄さんたち。頃合いを見てはサッと引き揚げてゆく。そこで、また人だかりが戻る。なんせ、おカネをしこたま持っているから。

その勢い(モメンタム)は利上げが休止になっても、止まるようなものではない。26年前の史上最高値は打ち上げ花火に終わったが、今回は、マーケットの景色を変える地殻変動に喩えられるだろう。需給のファンダメンタルズが構造的に変化している最中だからだ。

以上を"森"とすれば、"木"にあたる部分が、各種米国経済指標とかバーナンキさんの片言隻句。マーケットから距離を置いて見物していると、それらに一喜一憂して振り回され、結局振り出しに戻るさまが冷静に観察できる。プロのみならず、アマの個人投資家までが相場を難しく読みすぎているのではないか。難しくして解説することを生業(なりわい)とするアナリストも多いのだが。

私の欧米の友人たちもさぞかし徒労感強かろうと電話してみたが、皆、未だ夏季休暇中。まぁ、この時期に残っているのは、よほど損失かかえて必死のディーラーくらいだろうとは思ったが。今の欧米市場、喩えて言えば、メジャーリーグではなく3Aの選手たちの試合ていどに見たほうがいいようだ。

2006年