豊島逸夫の手帖

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性善説から性悪説へ パート2

2006年1月25日

1月13日本欄(性善説から性悪説へ)にこう書いた。きっかけはマンション偽装事件関連証言に頻繁に出てきた性善説という言葉であった。

いま、金需要が高まっている背景に信用リスクの高まりという要因がある。信用不安あるいは信用破綻の連鎖が、実物資産への回帰現象を生んでいるわけだ。金は"誰の債務でもない"ので、現物であれば信用リスクはない。

その信用リスクというのは、性善説にたてば想定外のハナシである。エンロン事件に代表されるような、不正融資スキャンダルに発展した粉飾決算とか背任行為とか民法上の不正行為など、信用不安の源は、性善説にたてば、ありえない、あってはならないことなのだ。それらは、従来、資産運用の世界ではイベントリスクといわれ、地震などの天災と同じ扱いで、仮にその結果、資産価値が減価しても"しょうがない、運が悪かった"と、あきらめることが当然とされた。

振り返れば、こう書いた直後から地検の強制捜査が始まった。今回も多くのライブドア株式保有者は"運が悪かったとあきらめる"しかないようだ。まぁ、エンロンと異なり、グループ内に優良資産も多く、資産価値が毀損してゼロになるわけではないことが救いか

米国ではエンロン倒産、担当監査法人アンダーセン解散が、金へのflight to quality(質への逃避)の一因となった。兜町は、まだまだ、それゆけドンドンの世界だが、デイトレーダー現象に反省気運が高まったことも事実だろう。

金の世界でも、デイトレーダー現象が見られるが、注意したいものだ。ここまで上昇トレンドに乗れて本当の下げを経験していない初心者は特に注意。野球に喩えれば、6回まで毎回得点で楽勝かと思われたゲームでも、7回に大量失点して逆転負けすることも珍しくないのだ。相場は野球と異なり、6回終了時点で勝手にコールドゲームを宣言してゲームオーバーにできることを忘れずに。

欧米は先週までと打って変わって膠着状態。というか、にらみ合いというか、水入りである。

2006年