豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. バーナンキ証言で金は売り
Page104

バーナンキ証言で金は売り

2006年2月16日

注目のバーナンキ証言で、利上げ継続が確認されたので、金は売られ、本稿執筆時点(2月16日朝7時)でスポット539ドル。

彼は色々語ったが、決め手となったのはこの一言に尽きる。以下原文引用。英語アレルギーの方はとばして結構。

The Fed judged that some further firming of monetary policy may be necessary, an assessment with which I concur.
(模範和訳:FRBは更なるなんらかの金融政策引き締めが必要であろうと判断しているが、その見方に私も同意する。)

I concur (同意する)というようなはっきりした物言いはグリンスパンには見られなかった。明快である。とはいえ、someという上品な言い回しで"ぼんやり存在感"を出している。このsomeを幾つかのなどという受験英語的訳で読んでもニュアンスは伝わらない。更にmayで婉曲感をだめ押した。

控えめな表現ながら、キリッとした決意表明が滲む。どこかの国の議会証言にはあり得ない、格調高く、味のある文なのだよ。

これで、3月のバーナンキ初のFOMCにおける0.25%利上げ継続(=4.75%)は決まったようなもの。焦点は、5%にまで持って行くか否か。

一昨日のテレビ東京モーニングサテライトで5%以上なら金には売り圧力と述べたが、その後、聴視者の方々から、それで金上昇トレンドも一転するのかと聞かれた。

いまの、金市場はそれほどヤワではない。説明しよう。

以下は、筆者が今、セミナーで使っているパワーポイントからの抜粋だ。まず、金価格上昇要因のまとめ。

インフレ懸念-原油高、財政赤字
有事の金買い-イラク、イラン、パレスチナ
ドル離れ-米国経済の双子の赤字に不安
中国、インドの台頭
オイルマネー
年金基金の金市場参入-金ETFを通じて
ロシア、中国などの公的金買いの動き
金生産の頭打ち傾向
次に金価格下落シナリオをまとめるとこうなる。

バーナンキが金利を5%以上に引き上げる
中国経済成長が7%前後まで減速する
中東が平和になる
米国民が過剰消費を慎み、貯蓄に励む
海底の金鉱脈を経済的に発掘する技術開発
ここで、4番目の要因とは、同時に中国人民が過剰貯蓄を慎み、消費に励めば双子の赤字も構造的に解消されるという意味である。3、4、5番目の要因は、無理やり考え出したもので、現実味は薄い。

そこで、利上げが加速して5%以上になった場合だが、まず、ヘッジファンドや短期的リターンを求める資金は金から離れ、新たな投資媒体を模索するだろう。既に、ゴールドマンサックスは、金売り勧告に切り替えた。

しかし、ここが大事なことだが、冷静に見れば、買いの材料は8つ(セミナー時間の関係でヘッジ買戻しなどは外している)もある。根の深い構造要因が複合的、有機的に絡んでいるので上昇トレンドに持続性があるのだ。利上げは、金利を生まない金には天敵であるが、それだけで、相場がひっくり返るほどの単純構造ではない。

4半期ごとの成績ノルマ達成にがんじがらめの人たちは、金を離れ、他の物色を始めた。1-2ヵ月も待てないのだ。対して、時間的制約のない自由な個人投資家にとっては、ここが狙い目となろう。

2006年