2006年2月14日
やっと まともに買いを論じられるゾーンまで下がってきた。本稿執筆時点(2月14日朝8時)スポット540ドル。健全な調整である。株も原油も同時に下げるなか、市場は金利上昇モードに入り投資家のrisk appetite(リスクを積極的に取る傾向)が萎えてきたとの指摘も。かと思えば、イラン情勢は更に悪化し、地政学的リスクのヘッジのためにflight to quality(質への逃避)を求める資金が金市場に流入とも言われる。これ、どちらも正しい。
短期的に売買差益を追求するマネーは一仕事終わってもう帰り支度。長期戦略的運用を目指す資金は、徐々に金を買い増し。往々にして両者がごっちゃに論じられるから要注意だ。後者の代表的(象徴的)インディケーターの金ETF残高の推移に注目していたが、2月13日時点で431.33トンと下げの過程でも2トンほどだが増加していた。手仕舞い売りで残高も減少するかと見守っていたので、存外という感じだ。なお、この統計以外にも、NYのもう一社(バークレーズ)のETFが31.75トンの残高を有しているとのこと。従って、総量は460トンを越える。
さて、今週の市場の注目点はなんといっても、バーナンキの初登場。議会での彼の発言の片言隻句を吟味して 利上げ継続ありやなしやの真意を汲み取ろうとするだろう。グリーンスパン夫人の"3回反芻してそれが夫のプロポーズだと分かった"という話は有名だが、いずれ大手投資銀行のアナリスト採用条件には英文解釈に優れた英文科卒というのが加わるのではないかと思えるほどだ。
今朝のテレビ東京系列、モーニングサテライトに出演したのだが、筆者の見解として、FFレートが5%を越えるようだと金に売りプレッシャーがかかると最後に述べた。実は、先週収録のビデオなので、こういう荒れた展開のなかでは内心ひやひやものなのだ。20-30分喋って実際オンエアーされるのは数分だし、直前のNY相場が乱高下することもしばしばだ。でも、今朝は要点を的確にまとめて編集していただいたので感謝。(雑然とした筆者オフィス風景はカットしていただきホッ...笑)。
なお、ここにきて、ブッシュのイラン攻撃シナリオについての具体的予測が目立ち始めた。同国内の核関連施設は意図的に分散され、それも地下施設が多いとのこと。それをピンポイントで狙ってゆくと民間への被害も甚大になろう。
イスラエルによる周辺地域じゅうたん爆撃というシナリオもある。それに対し、イランはホルムズ海峡封鎖。周辺中東諸国に散るシンパによる米国関連施設への波状報復も。まぁ、あくまで外交ルートが完全に閉ざされた場合のlast resort(最後の手段)ではあるが。でも、今のうちから忠告しておくが、万一突発的にそのような事態が起こって市場が有事の金などと騒ぎ出してから金に手を出してはいけないよ。